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『ダンテズ・ピーク』CG未発達の時代に、迫力のディザスターシーンはどう作られたか?(後編)

(c)Photofest / Getty Images

『ダンテズ・ピーク』CG未発達の時代に、迫力のディザスターシーンはどう作られたか?(後編)

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『ダンテズ・ピーク』あらすじ

地震が起こる可能性が極めて高いとされる休火山“ダンテズ・ピーク”を調査しにやって来た火山学者のハリー・ダルトン(ピアース・ブロスナン)は、調査の末、噴火の兆候を発見する。ハリーは、このままでは町全体が溶岩に飲み込まれる可能性があると訴えるが、仲間の研究者たちに信じてもらえず、市長のレイチェル(リンダ・ハミルトン)に直談判する。ハリーが説明をしようとした矢先、大きな地震が町を襲い、町民たちはパニックとなり逃げ惑う。外に出てダンテズ・ピークを見上げると、頂上から灰色の噴煙が高く昇っていた…。



 前編に続き、火山災害に真面目に取り組んだ映画である、『ダンテズ・ピーク』(97)について語る。今回は、撮影の舞台裏に関して述べる。 ※前編はこちらから


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ロケ地はアイダホ州のウォレス



 体育館で緊急避難の説明会を行っていた火山学者のハリー・ダルトン(ピアース・ブロスナン)は、町長のレイチェル・ワンダ(リンダ・ハミルトン)と共に脱出すると、すでに町はパニック状態だった。大きな地震で役場や教会堂が倒壊し、唯一の幹線道路だったフリーウェイも崩落する。


 製作総指揮のイロナ・ハーツバーグは、『逃亡者』(93)を手掛けたプロダクションデザイナーのデニス・ワシントンや、ロケーションスカウト担当のケン・ルバインらと共に、撮影の候補地を探して回った。そして条件に最適と考えられたのが、アイダホ州のウォレスだった。かつては鉱山で栄えたが、今は閑散としており、レンガ造りの古い建造物も残っていた。何より周囲を山脈に囲まれ、マットペインティングの手間が省ける。加えてストーリー上必要な、州間高速道路90号線の高架橋が町の真ん中を走っていた。



『ダンテズ・ピーク』(c)Photofest / Getty Images


 ハーツバーグは、「8週間に及ぶロケ撮影が終了するまで、幹線道路を閉鎖するため交通路を変更し、住民には一時的に住まいを移してもらい、一面に灰を撒くなどしますが大丈夫ですか?」(Cinefex, No.69, March 1997に掲載された、製作総指揮のイロナ・ハーツバーグの発言より)と、地元のフィルムコミッションに確認した。だが彼らは、「長期ロケは『天国の門』(81)で経験があるし、灰はセント・ヘレンズ山の噴火で実際に経験しているから、後始末さえきちんとしてくれれば構わない」という、非常に好意的な回答を得た。


 ワシントンは、さびれた町を活気ある様子にするため、実際の商店にオーニングテントを取り付け、閉まっている店舗にも商品や広告をデコレーションし、さらに街路樹も植えていった。そして建造物の倒壊シーンをリアルにするために、レンガのような実際の建材を用いて、町役場など既存の建物を拡張していった。撮影が始まってからも町民は非常に協力的で、開拓時代祭り、授賞式、体育館での全町総会などは、実際のウォレス市民がエキストラとして参加している。またパニックシーンにおいても、危険な場面はプロのスタントマンが演じているが、その背景にいる人々は市民が出演した。




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