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『ダンテズ・ピーク』CG未発達の時代に、迫力のディザスターシーンはどう作られたか?(後編)

(c)Photofest / Getty Images

『ダンテズ・ピーク』CG未発達の時代に、迫力のディザスターシーンはどう作られたか?(後編)

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撮影現場での特殊効果



 この映画が制作された97年は、CG技術が未発達だった。95年には、フルCG長編アニメ第一弾の『トイ・ストーリー』が公開されていたものの、扱える質感などは限られており、特にディザスター映画で重要な建造物の破壊、爆発、炎、煙、洪水などの要素は、まったく手付かずだったのである。そのため30年代の第一次や、70年代の第二次ディザスター映画ブームと同様に、物理的な仕掛けを施して現場で撮りきってしまう、プラクティカル・エフェクト(*1)が主に用いられた。


 SFXコーディネーターは、『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』(83)のロイ・アーボガストが選ばれた。彼は建物をリアルに倒壊させるため、ラム型大型油圧ジャッキやエアシリンダーなどを用い、実際に揺さぶって崩壊させている。だが教会の尖塔が倒壊する場面では、フルサイズのセットを爆薬で破壊している。しかし火薬の量と設置場所を誤り、木製の鐘楼が粉々に飛び散ってしまった。これでは自重で倒壊する雰囲気が台無しになってしまうため、デジタル・ペイントで破片を消去して3DCGの鐘楼を合成している。この作業は、後述するデジタル・ドメイン社が担当した。



『ダンテズ・ピーク』(c)Photofest / Getty Images


 アーボガストが最も苦労したのが、火山灰の表現である。火山アドバイザーの1人である米国地質調査所のノーマン・マクラウドは、本物の火山灰の使用を勧めたが、それではスタッフやキャストが吸い込んでしまって危険だし、ここで暮らす町民へのダメージも大きい。そのためアーボガストは、紙を粉砕して粉状にしたものを数トン用意し、7台のポンプで町中に巻き散らした。この結果には、火山アドバイザーたちも非常に満足したそうである。


*1 スペシャル・エフェクトやフィジカル・エフェクトなどとも呼ばれる。


特撮はデジタル・ドメインが担当



 ミニチュアや合成などの特撮は、デジタル・ドメインが手掛けている。ハーツバーグは、『ウォーターワールド』(95)の一部のショットで同社を使って非常に気に入り、ロジャー・ドナルドソン監督に強く薦めた。元々デジタル・ドメインは、『ターミネーター2』(91)のジェームズ・キャメロン監督が会長となり、同作で特殊メイク・プロデューサーを務めたスタン・ウィンストンが副会長、やはり同作でCGを手掛けたILMのスコット・ロスが社長となって、93年にロサンゼルスに設立した会社だった。(*2)


 その初期から、3Dや2DのCGツール(*3)を積極的に自社開発していたが、一方ミニチュアワークも得意だった。筆者はこの時期に同社を取材しているが、社内には『トゥルー・ライズ』(94)や『アポロ13』(95)、さらに撮影を終えたばかりの『タイタニック』(97)や『フィフス・エレメント』(97)などのミニチュアが至る所に置かれていた。


*2 キャメロンとウィンストンは、経営方針を巡ってロスと対立して98年に役員を辞任した。


*3 2DCGでは、ビル・スピッツァークがコンポジット・ツールのNukeを93年から開発しており、現在はThe Foundry社から市販されている。



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