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果てなき模索の物語『ラブレス』が現代に投げかける問いとは

©2017 NON-STOP PRODUCTIONS – WHY NOT PRODUCTIONS

果てなき模索の物語『ラブレス』が現代に投げかける問いとは

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現代テクノロジーが生み出したもの



 スマートフォンを片時も手放さず、自撮り画像をソーシャルメディアに投稿し、メッセージアプリで互いの気持ちを確認し合う。今や世界中で見られるようになった現代人の姿が、『ラブレス』の中でも描かれる。ネット、スマホ、SNSといった現代のテクノロジーで他者とつながることが便利で手軽になった反面、他人から羨まれるような幸福を手に入れたい、誰かから愛されていると実感したい、といった願望が増幅されている。それは、自分が本当に幸せかどうか、自分が相手を愛しているか、という自己に根ざした深い絶対的な洞察ではなく、つながりの中で感じる浅く相対的な欲求だ。



『ラブレス』©2017 NON-STOP PRODUCTIONS – WHY NOT PRODUCTIONS


 反対に、現代テクノロジーが生み出すポジティブな要素もある。本作で描かれているものとして、子供を捜索するボランティア団体の存在が挙げられよう。ロシアに実在する団体をモデルとする彼らは、通信機器とナビゲーション装置を活用し、監視カメラの映像や子供のチャット履歴にもくまなく目を通す。秩序だった連携行動をとる使命感の高いボランティアたちは、おそらくネットやSNSを介して集まってきたのだろう。行方不明の子供を真剣に探そうとしない警察をただ嘆くのではなく、個人がそれぞれのリソースを持ち寄って、既存システムに頼らない人的ネットワークで行政の不作為や欠陥を補っていく。



『ラブレス』©2017 NON-STOP PRODUCTIONS – WHY NOT PRODUCTIONS


 モノクロ調と寒色系が優勢な画面の中で、彼らが対照的なオレンジ色のベストを着ているのも偶然ではない。底冷えがするような暗い展開の中で、個人の善意を象徴するボランティアたちの献身がかすかな希望を感じさせる。彼らが分け入っていく林野の先に、ソ連時代の遺物とおぼしき巨大なパラボラアンテナが姿を見せるとき、強大な国家システムに対置された小規模でしなやかな市民のネットワークという構図が一層鮮明になるのだ。



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