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果てなき模索の物語『ラブレス』が現代に投げかける問いとは

©2017 NON-STOP PRODUCTIONS – WHY NOT PRODUCTIONS

果てなき模索の物語『ラブレス』が現代に投げかける問いとは

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時代背景と寓意



 描かれる時代は、劇中で流れるラジオの音声やテレビの映像により、ロシアの知識人によるプーチンへの抗議が盛んだった2012年から、ロシアによるウクライナ領クリミアの併合を端緒とする両国間の悲劇を経た2015年までであることが明示される。これらの政治と国際関係をめぐる要素はバックグラウンドにとどまり、前景に出ていることはない。だが、代表選手でもないジェーニャが「RUSSIA」と大きく書かれたジャージを着てルームランナーでエクササイズするシーンがあるので、ロシアという国のありように関する何らかの寓意が込められたと考えるのが自然だろう。


 素直に解釈すると、同盟や併合、分裂や独立を繰り返しながらより強く、より豊かになるという目標に邁進する国家が「親」に、国家の大切な宝であるはずなのにその個々人の幸福を顧みられない国民が「子」に、それぞれ重なる。いわば国民不在の国家運営に対するズビャギンツェフの静かな申し立てであり、そうした状況を許している言論人に対する慎ましいアジテーションでもある。



『ラブレス』©2017 NON-STOP PRODUCTIONS – WHY NOT PRODUCTIONS


 あわただしい日々を駆け抜けるように生きる私たちは、そんな寓意も込められた重層的な世界観に触れ、ふと足を止め、抗しようのない不安を抱くことになる。自分にとっての真の愛は、幸福は、もしかしたらどこかへ消えてしまったのではないかと。



文: 高森郁哉(たかもり いくや)

フリーランスのライター、英日翻訳者。主にウェブ媒体で映画評やコラムの寄稿、ニュース記事の翻訳を行う。訳書に『「スター・ウォーズ」を科学する―徹底検証! フォースの正体から銀河間旅行まで』(マーク・ブレイク&ジョン・チェイス著、化学同人刊)ほか。



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『ラブレス』

4月7日(土)、新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開

公式サイト: http://loveless-movie.jp/

©2017 NON-STOP PRODUCTIONS – WHY NOT PRODUCTIONS

配給:クロックワークス、アルバトロス・フィルム、STAR CHANNEL MOVIES


※2018年4月記事掲載時の情報です。

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