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『Dr.パルナサスの鏡』 巨匠ギリアムと仲間たちの奮闘によって完成した、ヒース・レジャー最期の作品

(c)Photofest / Getty Images

『Dr.パルナサスの鏡』 巨匠ギリアムと仲間たちの奮闘によって完成した、ヒース・レジャー最期の作品

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『Dr.パルナサスの鏡』あらすじ

ロンドンに、1000年生きたと称するパルナサス博士の旅芸人一座がやってきた。出し物は、鏡の中に客を誘い、人の心の中の欲望の世界を見せるという摩訶不思議な装置“イマジナリウム”。博士の鏡をくぐりぬけると、摩訶不思議な迷宮が待っている。実は博士、かつて悪魔のMr.ニックと契約を交わし、不死の命を得ていた。ただその代償に、娘が16歳になったら悪魔に差し出さなければならない。そして、その期限である娘ヴァレンティナの16歳の誕生日は刻一刻と近づいている。そんなある日、一行は橋の上から吊るされた若者トニーを救う。トニーは一座に加わり、商才を発揮して見世物を繁盛させる。娘を救うため、博士はトニーとともに、鏡の迷宮で最後の賭けに出る…。


Index


数々の試練を乗り越えてきた巨匠テリー・ギリアム



 人は、テリー・ギリアムの映画を「奇想天外!」と手放しで称賛する。ぶっ飛んだ世界観、シュールな笑い、素っ頓狂なキャラクター、湯水の如くあふれ出すイマジネーション・・・その規格外の素晴らしさはモンティ・パイソン時代から不変のまま。他を圧倒するオリジナリティで創造性を追求しつづける様は、神々しくさえ思えるほどだ。


 ご存知の通り、彼は映画製作に挑むたび巨大な試練に見舞われてきた。『未来世紀ブラジル』(85)ではスタジオ側と抗争を繰り広げ、『バロン』(88)では見る見るうちに予算が膨れ上がり、『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(18)もまた、90年代に一度、製作中止に追い込まれた。


 ただし彼は決して諦めない。ギリアムが凄いのは、いざトラブルに見舞われるとその理不尽さに怒り心頭し、アドレナリンを身体中に巡らせながら、尋常ではないバイタリティで這い上がろうとするところ。そうやって立ちはだかる壁を遥かに凌駕する芸術性を発揮して、果敢に戦い、そして打ち勝ってみせる。この不屈のアーティスト魂は驚異的だ。


『Dr.パルナサスの鏡』予告


 しかしそんなギリアムも、本作『Dr.パルナサスの鏡』(09)の制作中に主演ヒース・レジャーの急死の報が飛び込んできた時には、あまりの衝撃に打ちひしがれ、深く落ち込んだという。


 彼らはロンドンでの撮影を終えたばかりだった。締めくくりに撮ったのは、レジャーが壊れゆく馬車に飛び乗って通りの角を曲がって去っていくシーン。まさかこれがカメラで捉えた彼の最期の姿になるなんて、誰が想像しただろうか。そのたった2日後、レジャーは残り3分の2の撮影を残したまま、滞在先のニューヨークで亡くなった。




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