『帝国の逆襲』の脚本家を後押したジョージ・ルーカス
映画の脚本・監督を手掛けたのは、『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(80)や『レイダーズ/失われたアーク《聖櫃》』(81)の脚本家として知られたローレンス・カスダンだった。彼は当時フォックスにいた製作者、アラン・ラッド・ジュニアに脚本執筆の依頼を受けたが、今度は自分の監督作を撮りたいと考え、『白いドレスの女』のアイデアを彼に話したという。この映画のシナリオが完成後、ラッド・ジュニアにスポンサーを探すようにと言われ、『スター・ウォーズ』シリーズのジョージ・ルーカスに読んでもらったところ、すごく気にいってもらえたという。
やがて、ラッド・ジュニアの新しい製作会社、ラッド・カンパニーで製作を受けてもらえたが、ルーカスはカスダンに内緒で、「製作費が足りなくなったら自分が出すから」とジュニアに持ちかけていたという。
BDの特典映像によれば、ジュニアは特に大きな注文はつけなかったが、一点だけ気にいらないことがあったという。主人公の弁護士を演じるウィリアム・ハートの口ひげを剃ったほうがいいと主張した。「安っぽい男に見える」というのが、その理由だったが、実はカスダン監督の狙いはそこにあり、主人公のそれほど賢くない部分を見せるため、あえて口ヒゲにこだわっていた。この忠告は無視して、口ヒゲをそらなかったが、やがて製作者は何も言わなくなったそうだ(人物像と口ひげの意図を納得したのだろう)。
『白いドレスの女』(c)Photofest / Getty Images
この映画でデビュー後、『再会の時』(83)や『偶然の旅行者』(88)といった心に残る人間ドラマを手掛けることになるカスダンは、脇の人物にも気を使ったキャスティングをしている。殺される夫役は悪党っぽい雰囲気のあるリチャード・クレンナ、タップダンスが好きな主人公の仕事仲間に、後に『スリーメン&ベビー』(87)で人気を得るテッド・ダンソン。彼の踊りはすべて事前に振り付けが用意されたという。そして、主人公の危機を察して彼に忠告するチンピラ役に、無名時代のミッキー・ローク。ツルツルの若い顔が初々しい。
カスダンは「脇の人物の見せ方にも手をぬかないようにした」と特典映像で語っているが、主役ふたりだけではなく周囲の人物もうまく見せることで、よくあるB級サスペンスとはひと味違いキャラクター作りのうまさが光る作品になっている。