『白いドレスの女』あらすじ
プレイボーイの弁護士ネッドは、白いドレスを着た美しい人妻マティとの情事に溺れる。すっかり骨抜きにされたネッドは、やがてマティから、夫のエドムンドを殺害して遺産を相続する計画に誘われる。ネッドは強盗を装って屋敷へ忍び込むが…。
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ハリウッド悪女映画の流れを変えた
悪女映画は、ミステリーのひとつのジャンルとなっているが、悪女映画の流れを変えた作品としてアメリカでカルト的な人気を獲得していたのが、81年の『白いドレスの女』である。悪女を演じていたのはキャスリーン・ターナーで、相手役はウィリアム・ハート。ターナーはこれが衝撃のデビュー作となり、ハートも出演3作目。当時はそのキャスティングも新鮮で、これまでとはひと味違う悪女物として注目された。
悪女映画といえば、4回映画化されているジェームズ・M・ケイン原作の『郵便配達は二度ベルを鳴らす』や同じ原作者の『深夜の告白』(44)など、古典と呼ばれる作品が過去に作られている。前者はジャック・ニコルソン、ジェシカ・ラング主演の新たなハリウッド版が81年に作られて話題を呼んだが、『白いドレスの女』は同じ年に作られたオリジナル脚本の作品で、女性像の描写が新鮮だった。
『白いドレスの女』予告
『郵便配達は二度ベルを鳴らす』『白いドレスの女』のどちらにも、愛人と一緒に年上の夫殺しを企てる人妻が登場する。前者のジェシカ・ラング演じるヒロインは夫との退屈な日常に飽きていて、たまたま彼女の食堂にやってきた放浪者と関係ができた後、夫殺しを考え始める。どこか退廃的で、悲劇的な雰囲気がぬけきれないヒロイン像だ。
『白いドレスの女』も犯罪の設定は似たところがあるが、こちらのヒロインはもっとサバサバした性格の悪女。物語の中にはいくつかのトリックも用意され、巧妙展開が見物となっている。ハンフリー・ボガートが主演したような古いハリウッドのフィルム・ノワールの雰囲気と、80年代のクールな心理ゲームの感覚をミックスしたような感覚だ。
キャスリーン・ターナー演じるセクシーでありながらも、活動的な雰囲気もある悪女像は、当時はすごく斬新に思えた。フェミニズム運動などの影響で、ハリウッドで自立した女性像が本格的に描かれるようになったのは1970年代からで、人に媚びない女性像をジェーン・フォンダのような女優が作り上げたが、そんな時代を経ることで、『白いドレスの女』には、自立したイメージのスマートな悪女が登場したのだ。そんな流れのさらなる発展形として、シャロン・ストーンが主演した『氷の微笑』(92)が90年代に作られ、さらにタフで、挑発的な悪女が生まれることになる。