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『冬物語』エリック・ロメールが描き出す、偶然への賛歌

©1991 Les Films du Losange

『冬物語』エリック・ロメールが描き出す、偶然への賛歌

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女性の映画・俳優の映画



 「オフィスで誰かを見たとき、その人がカメラの前でどうなるのか分かります。特に身振り手振りを通して、その人がカメラの前でどのような態度を取るのか分かります」「俳優の肖像画のようなもので、彼らのために作られた映画なのです」(エリック・ロメール)*2


 『緑の光線』(86)を撮影する際、主演のマリー・リヴィエールの不安を取り除くために女性のスタッフで固めたことは、エリック・ロメールの創作に少なからず影響を及ぼしたのかもしれない。エリック・ロメールを含んだ彼女たちは「ル・クラブ・デ・サンク(五人組)」と名付けられた。「四季の物語」シリーズでは80年代に撮られた「喜劇と格言劇」シリーズに続いて、より俳優と切り離せない形で女性の人生が捉えられている。シリーズ中、唯一の例外である『夏物語』(96)さえもが、青年を通り過ぎていく女性たちの物語として解釈することができる。俳優のための映画。彼女たちのための映画。「四季の物語」シリーズが『緑の光線』のマリー・リヴィエールが主演する『恋の秋』(97)で終わるのは示唆的だ。人生の秋。『恋の秋』では、もう若くはない女性の人生が描かれている。


『四季の物語』予告


 「四季の物語」は女性のイメージを偶像化していない。エリック・ロメールはすべての登場人物に対して称賛することも批難することもしていない。彼女たちの機微だけを共感と調和の精神で記録していく。エリック・ロメールのこういった姿勢がミア・ハンセン=ラブに引き継がれている。彼女は『冬物語』をフェイバリット映画に挙げている。移ろいゆく風景や無常に過ぎ行く年月の中で、忘れられない恋に苦しむ女性を描いた『グッバイ・ファーストラブ』(11)や、その変奏といえる『ベルイマン島にて』(21)には、本作からの大きな影響を読み取ることができる。





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