不器用さを受け入れ肯定する
物語が進むにつれ、マーリアの几帳面さやコミュニケーションの不得手さは、アスペルガー症候群か発達障害に由来することが示唆されていく。さらに、並外れた記憶力を持つサヴァン症候群の傾向があることも明かされる(サヴァン症候群は、『レインマン』でダスティン・ホフマンが演じたキャラクターによって広く知られることになった)。
エンドレも左腕に障害がある。食事の支度など、家事に苦労する場面も描かれる。障害が直接的な理由かどうかは不明だが、数年前に人生を諦めている。もういい、幸せになろうとあがいても無駄なだけだ、と。
『心と体と』2017 (C) INFORG - M&M FILM
そんな2人が出会い、ぎこちないやり取りをしながら相手に想いを伝えようとする。不器用な恋愛をユーモアも添えて描くエニェディ監督の眼差しは温かい。失敗や挫折があってもいい、他者と出会うことに人生の価値がある――そんな肯定と祝福に満ちた映画だ。
フリーランスのライター、英日翻訳者。主にウェブ媒体で映画評やコラムの寄稿、ニュース記事の翻訳を行う。訳書に『「スター・ウォーズ」を科学する―徹底検証! フォースの正体から銀河間旅行まで』(マーク・ブレイク&ジョン・チェイス著、化学同人刊)ほか。
『心と体と』
2017 (C) INFORG - M&M FILM
配給 : サンリス
4月14日(土)より新宿シネマカリテ、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
公式サイト: http://www.senlis.co.jp/kokoroto-karadato/
※2018年4月記事掲載時の情報です。