1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. WANDA/ワンダ
  4. 『WANDA/ワンダ』結末を拒否するヒロイン、終わりのない彼女の物語
『WANDA/ワンダ』結末を拒否するヒロイン、終わりのない彼女の物語

(C)1970 FOUNDATION FOR FILMMAKERS

『WANDA/ワンダ』結末を拒否するヒロイン、終わりのない彼女の物語

PAGES


バーバラ・ローデンとは何者か?



 「ワンダというキャラクターは、私自身の人生、そして私が理解した他人の人生に基づいたものです。すべては私自身の体験からきています」(バーバラ・ローデン)*2


 バーバラ・ローデンとは何者か? セリーヌの「夜の果てへの旅」やエミール・ゾラの「ナナ」を愛読書に挙げ、ゴダールの『勝手にしやがれ』やアンディ・ウォーホルの映画を好んでいたバーバラ・ローデン。彼女が残した唯一の長編監督作品『WANDA/ワンダ』は、マルグリット・デュラスに賞賛された。マルグリット・デュラスによるエリア・カザンへのインタビュー記事には、バーバラ・ローデンの『WANDA/ワンダ』への賞賛の言葉が溢れている。48歳で逝去したバーバラ・ローデン。彼女の最後の言葉は「クソ!クソ!クソ!(Shit! Shit! Shit!)」だったことがエリア・カザンの自伝に綴られている。


 バーバラ・ローデンは、父親に捨てられ貧困に苦しむ家庭に育ったという。16歳の時にニューヨークへ旅立ち、ナイトクラブ「コパガバーナ」のダンサーとして生計を立てている。また、雑誌のピンナップガールとしても活躍している。男性の望む女性像を演じ切ること。容姿に留まらず内面においても他人が望むようなイメージを追いかけること。バーバラ・ローデンはかつての自分を「ゾンビのように生きていた」と形容している。*2


『WANDA/ワンダ』(C)1970 FOUNDATION FOR FILMMAKERS


 ナタリー・レジェの「Suite For Barbara Loden」という著作には、ワンダのモデルとなった実在の女性に関する新聞記事を発見したことが綴られている。実在のワンダことアルマ・マローンはバーバラ・ローデンと同い年であり、複雑な家庭環境に育った。銀行強盗の共犯の罪で二十年の刑務所生活を宣告されたアルマ・マローンは、裁判官に感謝の言葉を送ったという。彼女にとってはこのまま当てのない世界を彷徨い続けることよりも刑務所に行く方がマシだった。失敗が生を繋ぎ止めたという彼女の人生は、『WANDA/ワンダ』に描かれていることと結びついている。もしニューヨークに飛び出さなければアルマ・マローンと似た人生を送ったかもしれない。バーバラ・ローデンにとってアルマ・マローンの事件は、ありえたかもしれないもう一つの人生だったのかもしれない。アルマ・マローンは裁判官にこう言ったという。「生きる理由はあまりないけれど、私は生きていたかった」。*2


 劇中、ワンダは偶然出会った犯罪者デニス(マイケル・ヒギンズ)と共に逃避行の旅に出る。ワンダとデニスはアメリカの片田舎を当てもなく彷徨い続けることよりも、むしろ失敗によって救われることを望んでいるように見える。





PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. WANDA/ワンダ
  4. 『WANDA/ワンダ』結末を拒否するヒロイン、終わりのない彼女の物語