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『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』伝説の音楽アニメに込められたもの 前編

『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』伝説の音楽アニメに込められたもの 前編

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30年を経ても古びることのない最強の音楽アニメ



 動画配信も円盤のリリースもないが、劇場でリバイバル上映されるわずかな機会に観客が詰めかける映画がある。人気マンガ「ちびまる子ちゃん」の劇場版アニメーション第二弾として1992年に公開された『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』である。


 最初の公開から30年。上映素材は当時の35mmフィルムで、経年劣化や傷も多く、決して良好な状態とはいえない(他の鑑賞手段は、古いVHSビデオかレーザーディスクを探すしかない)。しかし今年のGWに神保町シアターで上映された際は、連日満員御礼のチケット争奪戦状態。リピーターも多いようだが、年齢層は幅広く、ノスタルジーだけで集まっているとは思えない。


 では、この映画の何がそこまで人を惹きつけるのか? 日常の視点でホロリと泣かせるさくらももこの巧みな語り口にもあるだろうし、アニメ表現でしか味わえない動く絵がもたらす快楽も大きい。そして最大の特徴といえるのが、本作が真性の《音楽映画》であること。原作者であり、企画を立案し、脚本を書いたさくらももこは、子供の頃から大好きだったディズニーの『ファンタジア』(40)やザ・ビートルズの『イエロー・サブマリン』(68)のような、楽曲に合わせたミュージカル的シーンがふんだんにある映画を作ってみたかったのだという。


 さくらももこの音楽趣味を反映してか、選曲も凝っている。まる子が花輪くんの家のロールスロイスに乗せてもらう躍動感あふれるシーンでは大滝詠一の「1969年のドラッグ・レース」。仲良くなった絵描きのお姉さんの描いた絵に見惚れるファンタジックなシーンでは細野晴臣の「はらいそ」。さくらももこと親交のあった“たま”の「星を食べる」のような、一聴して子供向けとは言い難いダークな歌詞の曲もある。


 そしてどのミュージカルシーンにも、ほとんどドラッギーと言いたいくらい凝りまくったアニメーションがアテられていて、アートなミュージックビデオとしても一級品。しかも後に『マインド・ゲーム』(04)で監督デビューを果たす若き天才、湯浅政明が「1969年のドラッグ・レース」と笠置シズ子の「買物ブギー」のパートを担当し、キレッキレの表現で“映像で魔術師”っぷりを遺憾なく発揮しているのだから、30年を経て伝説化するのも当然だろう。


 特に「買物ブギー」のナンセンスな詞と笠置シズ子の関西弁歌唱に合わせて、画面をオバハンとオッサンで埋め尽くす放埒なシークエンスは、ストーリーとは何の関係もないだけに、表現のピュアさが際立って、一度見たら忘れられない強烈な印象を残す。





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