1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ザ・ビーチ
  4. 『ザ・ビーチ』ダニー・ボイルと仲間たちが目指した楽園、そしてその崩壊
『ザ・ビーチ』ダニー・ボイルと仲間たちが目指した楽園、そしてその崩壊

(c)Photofest / Getty Images

『ザ・ビーチ』ダニー・ボイルと仲間たちが目指した楽園、そしてその崩壊

PAGES


『トレインスポッティング』の友情とその崩壊



 映画『ザ・ビーチ』は、ダニー・ボイル監督と脚本のジョン・ホッジ、製作のアンドリュー・マクドナルドが4度目となるチームを組んだ作品だ。そしてこれに加えて、当初はユアン・マクレガーが主演するという流れで企画が始動していた。


 言うまでもなく、彼らは90年代、『シャロウ・グレイヴ』(94)と『トレインスポッティング』(96)で時代の寵児となった盟友だ。その後、映画界のさらなる高みを目指して、永遠の楽園、ハリウッドへ渡って『普通じゃない』(97)を手がけたものの、これが興行的に不発に終わる(ただし、ファンの間では幅広く愛されている作品ではある)。となると、続く『ザ・ビーチ』はもう崖っぷち。失敗は許されず、ボイル監督が不退転の覚悟で臨んだことは疑いようがない。


 と、ここで何が起こったかというと、ダニー・ボイルは最終判断として、マクレガーではなく、レオナルド・ディカプリオを主演に据えること決めたのである。


 そこにはスタジオ側の要求もあったかもしれないし、希望通りの制作規模を手にするためには知名度の高いディカプリオを選ぶことのメリットの方が大きかったのも事実だろう。なにしろ『タイタニック』の歴史的大ヒットの後、ディカプリオが時間をかけて100本以上の脚本に目を通した中からこの企画に目をとめたというのだから、ボイルとしてはある意味、超ラッキーな展開と言える。



『ザ・ビーチ』(c)Photofest / Getty Images


 だが、今回も気心しれたチームが手がける作品に主演できると思っていたマクレガーにしてみれば、思わぬ具合に梯子を外されたような格好だ。この時のショックがあまりに大きかったのか、ボイルとマクレガーはそれから10年以上も断絶状態となってしまう。


 この舞台裏でのエピソードを踏まえて『ザ・ビーチ』を見ると、クライマックスの「ロシアン・ルーレット」の場面がひときわ意味深に思えてくる。友情の終焉、永遠に続くと思っていた楽園の崩壊ーーー。ボイルもこの映画で、ある意味、確実に引き金を引いたわけだから。


 それはきっとマクレガーの一件にとどまらず、我々には理解できないレベルで、その他の様々な事象にも影響を及ぼしていたに違いない。『ザ・ビーチ』以降、ボイルはジョン・ホッジともしばらく共に仕事をすることはなかったし、さらにはアンドリュー・マクドナルドと共作する機会もみるみる減少していく。この映画をきっかけに、かつて共に映画界でセンセーションを吹きあらし、その延長線上にハリウッドという楽園を夢見た彼らは、さながら本作のラストシーンのように散り散りになって別々の道を歩き始め、その後、『T2:トレインスポッティング』(17)まで4人が揃うことはなかったのである。





PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ザ・ビーチ
  4. 『ザ・ビーチ』ダニー・ボイルと仲間たちが目指した楽園、そしてその崩壊