(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTSRESERVED
【ネタバレ無し!】『レディ・プレイヤー1』71歳のスピルバーグが牽引してきた世界最先端のバーチャル・プロダクション
2018.04.20
デジタル・メイキングの革命児が、さらに世界を広げていく
こうした『タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密』『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』での取り組みが功を奏し、今回の『レディ・プレイヤー1』へと実を結んでいったのである。今回の場合はWETAデジタルからILMへと統括担当の視覚効果スタジオが代わり、またライブアクションとCGとのシームレスな融合は「オアシス」と「現実世界」という形で個々に独立した表現になっているものの、全体的な描写のクオリティはこれまで以上に精度を増している。また技術的にも、今回は監督自身がVRヘッドセットを装着し、VR空間のグラフィック内に身を置いて演出するといった、監督自身を没入させるスタイルでの撮影がおこなわれている。つまり本作を生み出すためのバーチャル・プロダクション環境が、もはや劇中の「オアシス」そのものといえる様相を呈していることに驚きを禁じ得ない。
とはいえ、このような映画製作の様式が何の前触れもなく勃興したのではなく、フィルモグラフィを紐解いてみれば、そこには布石ともいえる前兆があったことがわかるだろう。なにより、スピルバーグはこうした新技術に後乗りしてきた参入者ではない。自作『 ジュラシック・パーク』(93)でCG恐竜を世に送り出し、デジタル・キャラクターの革命を呼び起こした張本人だ。すなわち、そこには自らによって広がったデジタル・メイキングの裾野を、さらに自身が大きく拡大していこうとする構図がうかがえ、大いに宿命めいたものを覚える。
『レディ・プレイヤー1』(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTSRESERVED
ちなみに『レディ・プレイヤー1』は、オアシス空間内をCGで創造し、そして実写パートを35mmフィルムで撮影している。それはスピルバーグが同作に付帯させたテーマ「空想に夢を求めると同時に、現実もまた重要なのだ」を象徴しており、とりもなおさずそれは、スピルバーグの作品づくりの姿勢をも如実にあらわしている。
ライツ(権利)の垣根を超えた「ポップカルチャー大集合」の話題が先行しがちな『レディ・プレイヤー1』。だが、そこには監督が時代の先端を追いながらも、作り手としての自らを進化させていく映画として、スピルバーグという作家の存在が大きくオーラを放ち見えてくるのだ。
出典:
https://www.hollywoodreporter.com/behind-screen/bfg-visual-effects-whiz-joe-907996
参考文献:
「 メイキング・オブ・レディ・プレイヤー1」(株式会社スペースシャワーネットワーク)
「シネフェックス日本版」2012年25号(株式会社ボーンデジタル)
映画評論家&ライター。主な執筆先は紙媒体に「フィギュア王」「チャンピオンRED」「映画秘宝」「熱風」、Webメディアに「映画.com」「ザ・シネマ」などがある。加えて劇場用パンフレットや映画ムック本、DVD&Blu-rayソフトのブックレットにも解説・論考を数多く寄稿。また“ドリー・尾崎”の名義でシネマ芸人ユニット[映画ガチンコ兄弟]を組み、TVやトークイベントにも出没。
『レディ・プレイヤー1』
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト: http://wwws.warnerbros.co.jp/readyplayerone/
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※2018年4月記事掲載時の情報です。