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『プレデター:ザ・プレイ』精緻な考証や現代的テーマが導くSFアクションの新たな可能性

(C)2022 20th Century Studios

『プレデター:ザ・プレイ』精緻な考証や現代的テーマが導くSFアクションの新たな可能性

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自己実現のための闘いを描く



 そのようなリアリティに監督がこだわった背景には、本作の真のテーマが大きく関係しているに違いない。それは、「ジェンダーによって生き方を規定されない自由」だ。先述したように、コマンチ族ではハンターは男性、家事は女性という性別による分業制がとられていたという。しかし少女ナルはそのような因習に抗い、自らがなりたいものになる自己決定権を獲得するためプレデターとの戦いに身を投じることになる。


 彼女はプレデターと戦わざるを得ない状況に置かれているわけではなく、自ら進んで戦いに赴く。つまりプレデターこそが、彼女に自己決定権をもたらす「獲物」=「PREY」なのである。もちろんタイトルの「プレイ(獲物)」にはプレデターが狩る人間という意味も込められているに違いない。プレデターも強大な獲物を狩ることで1人前のハンターとして認められる文化を持っているからだ。つまり本作は自己実現のために互いが互いを狩ろうとする物語となっているのだ。



『プレデター:ザ・プレイ』(C)2022 20th Century Studios


 さらに本作の成功はもう一つ重要な意味を持つ。それはテーマ性やキャスティングをより現代的なものにアップデートすることが、作品そのものの面白さを加速させることを証明したからだ。映画ファンの中には「配役が人種やルッキズムの偏りに配慮したものになることで、映画本来の魅力が犠牲になってしまう」という見解を持つものはいまだ一定数いる。しかし、『プレデター:ザ・プレイ』はそのような見解が的外れであることを証し、さらに、正確な考証や現代的なテーマをアクションに持ち込むことが、新たな映画的興奮を生み出すことに気づかせてくれた。


 35年以上愛されてきた「プレデター」は時代の風雪に耐え、新たな試みによって、さらなる輝きをまとったのだ。



文:稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)『師弟物語~人生を変えた出会い~【田中将大×野村克也】』(NHK BSプレミアム)



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『プレデター:ザ・プレイ』

ディズニープラス「スター」にて独占配信中

(C)2022 20th Century Studios

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