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『カラー・オブ・ハート』色彩テクニックが示唆するアメリカの分断(前編)

(c)Photofest / Getty Images

『カラー・オブ・ハート』色彩テクニックが示唆するアメリカの分断(前編)

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『カラー・オブ・ハート』あらすじ

高校生のデイヴィッドは、1950年代のホームコメディ「プレザントヴィル」の大ファン。ある日、奇妙なTV修理工がやってきて、渡された不思議なリモコンのボタンを押すと、彼は双子の妹・ジェニファーと一緒にドラマの世界に入り込んでしまう。そして、彼らが持ち込んだ価値観や行動が、平和な“プレザントヴィル”の世界に変化をもたらしていく。



 『カラー・オブ・ハート』(98)は、『シービスケット』(03)や『オーシャンズ8』(18)などのゲイリー・ロスが、監督デビュー作として手掛けた作品である。50年代の白黒テレビドラマ“プレザントヴィル”の中に迷い込んだ高校生の兄妹によって、モノクロの世界に色彩が出現し、登場人物たちの行動や思想にも変化が生じるといった内容だ。前編となる今回は、「映画と色の関係」について語ってみたい。


Index


あらすじ①



 時代は98年。主人公は二卵性双生児の高校生である、兄のデイビッド(トビー・マグワイア)と、妹のジェニファー(リース・ウィザースプーン)だ。二人の性格は正反対で、ジェニファーが自由奔放なのに対し、デイビッドは超奥手のオタクだった。


 デイビッドの唯一の趣味は、58年に放映された白黒の連続テレビドラマ「プレザントヴィル」を繰り返し観ることである。彼は、このホームコメディで描かれる「頼れる父と優しい母に育てられる子供たち」を登場人物とした“理想的な家族”に憧れている。なぜなら両親はすでに離婚して、2人は母親に引き取られていたからだ。だがその母親も、子供の世話を煩わしく思っており、新しい年下の恋人と旅行へ行ってしまう。



『カラー・オブ・ハート』予告


 家に兄妹だけとなるチャンスに、デイビッドは「プレザントヴィル」全話のマラソン放映と、終了後のマニアックなクイズへの視聴者参加を楽しみとしていた。だがジェニファーは、憧れの男性を連れ込んで、MTVを観ながら夜を過ごす計画を立てていた。兄妹はチャンネル権を巡り争っている内、誤ってリモコンを壊してしまう。


 しかし、修理を頼んだわけでもないのに、奇妙な電気屋(ドン・ノッツ)が突然やって来る。そして彼らに、特別なリモコンを渡して帰っていった。兄妹はまたしてもリモコンの奪い合いを始め、ボタンを押してしまう。気が付くと兄妹は、モノクロの「プレザントヴィル」の世界へ入っており、登場人物のバッドとメアリー・スーに代わっていた。




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