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『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』「MCU」という固有のジャンルを映画史に築いた記念碑的作品
2018.04.28
もはやアメコミ実写映画という狭義を超えた「MCU」という固有のジャンル
また今回、ピーター・クイル/スター・ロード(クリス・プラット)以下『 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の面々が参入することで、映画のトーンがちぐはぐになりはしまいかといった懸念もあるだろう。終末観をひしひしと感じさせるストーリーに、ドラッグス(デイヴ・バウティスタ)やロケットがその場にいるだけで、重厚なシェイクスピア劇が吉本新喜劇へと転調するような・・。いや、そこも全く無問題で、本作はそのコミカルささえも物語の重要な伏線として取り込んでくる。しかも彼らのもたらす突き抜けたギャグ感覚が、後の展開を深化させる役割をも果たすのだ。そこの部分をシームレスに融和させているのも、本作の美点といえるだろう。グルートが横でゲームをしていても違和感のないシェイクスピア劇、そんな性質を持つ今回の『インフィニティ・ウォー』は、ある意味で MCUの完成型と断じていいのかもしれない。
ゼロ年代以降、アメコミ実写化映画の潮流としてある「ヒーローの写実性」といった轍を踏まず、あくまでマーベルは自社コミックをリアリティへと寄せつつも、アメコミ実写映画の幻想性をコミックスらしい大らかさと自由さをくるんだ形で提供している。そしてただ闇雲にハードボイルド化させるのは、いい大人がマンガ映画を観ることへの言い訳や免罪符にすぎないのだと我々に再考をうながしていく(意図的にDCをディスってるワケではないが、必然的にそうなるだろう)。そしてマーベルにおけるこうした動きは、もはやアメコミ実写化作品という狭義を超え、「MCU」という固有のジャンルを映画史に築いたのではないかーー。『インフィニティ・ウォー』はその最良の形であり、記念碑的な存在になったと実感できるのだ。
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』©Marvel Studios 2018 All rights reserved.
そしてなにより本作は優れた群像劇であり、キャラクター個々がひとつの大きな出来事に向かって収束していくカタルシスも、この映画がもたらす大きな愉悦だろう。トニー・スターク/アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)とスティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)の分裂を軸芯に、アベンジャーズ加入への試練を抱えたピーター・パーカー/スパイダーマン(トム・ホランド)や、ヴィジョン(ポール・ベタニー)とスカーレット・ウィッチ(エリザベス・オルセン)の『 昼顔』(17)における斎藤工と上戸彩のただれた関係にも似た恋模様など、それらここ10年のMCU事象がカシャカシャと歯車のように駆動し、あたかも精密機械のごとくクライマックスへと加速をつけて全体が回り出す様は、なかなかに壮観だ。
複雑な親子関係に泣かされてきたガモーラ(ゾーイ・サルダナ)、ソー(クリス・ヘムズワース)、スター・ロードといったキャラクターの試練がドラマに絶妙にリンクしていくところも、涙なしには観られない。