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『ロックンロール・ハイスクール』3分間のポップミュージックがくれる魔法

© 1979 New World Productions Inc. All Rights Reserved.

『ロックンロール・ハイスクール』3分間のポップミュージックがくれる魔法

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リフ・ランデルとケイト・ランボー



 「しかしそれ(ラモーンズの存在)以上に、リフ・ランデルというキャラクターがこの映画を支えているのです。この映画の話をしてくる人の七割は年齢を問わず女性なのですが、みんな初めてこの映画を見たときに、リフ・ランデルに力をもらったとか、自分もロックファンになれるんだということを話してくれるのです。学校から文句を言われる筋合いはないし、好きな格好をして望むことをすればいい。自分たちの欲求が一番大事なんだと」(アラン・アーカッシュ)*2


 ジョーイ・ラモーンはピザを食べる角度さえもセクシーなのだと、親友のケイト・ランボー(デイ・ヤング)に力説するリフ・ランデルは、熱病に浮かされたような恋心をジョーイに抱いている。『ロックンロール・ハイスクール』において、彼女たちの友情は、ラモーンズの存在と同じくらいに重要なポイントだ。リフ・ランデルがケイトをからかい、怒ったケイトが枕をぶつけるシーンは、まるでアドリブであるかのような瑞々しさに溢れている。



『ロックンロール・ハイスクール』© 1979 New World Productions Inc. All Rights Reserved.


 P・J・ソールズとデイ・ヤングはラモーンズのことを知らなかったという。本作のキャストの中で普段からパンクを愛聴していたのが、ラモーンズを敵視する女校長を演じたメアリー・ウォルノフだったというエピソードは面白い。P・J・ソールズは撮影が始まってからラモーンズのことを大好きになったという。撮影中のラモーンズのメンバーが、あまりにシャイなのを目の当たりにした彼女は、すぐに彼らのことを「本物」のアーティストだと感じたという。本作には演技としては不完全とも思えるラモーンズの演技が少なからず記録されているが、それすらも作品の愛おしさにつながっている。なんの問題もない。下着姿で歩くリフ・ランデルの前にして素で照れてしまうメンバーの姿は、むしろ最高にキュートだ。


 ロジャー・コーマン製作の低予算映画である本作では、リフ・ランデル役の衣装用に100ドルしか予算が出なかったため、P・J・ソールズは報酬の全額を自腹で衣装代に費やしたという。リフ・ランデルという反抗的で魅力的な少女をスクリーンに最高の形で輝かせるために。本作で彼女は高校生を演じているが、実際の年齢は28歳だった。おそらく最後のティーン役のつもりで挑んだであろうP・J・ソールズの並々ならぬ熱意。リフ・ランデルと親友ケイトが、人生最高の晴れ舞台ともいえるラモーンズのライブ会場に着ていく衣装の可愛らしさ。とっておきの服を着て好きなバンドのライブに行く。少女にとってラモーンズは人生そのもの、もしかすると人生以上の存在なのだということを、リフ・ランデルの衣装は狂おしいくらいの熱量で伝えている。





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