『ロックンロール・ハイスクール』3分間のポップミュージックがくれる魔法

ハード・デイズ・ナイト

　アラン・アーカッシュは、ロジャー・コーマンの設立した「ニュー・ワールド・ピクチャーズ」で予告編の編集や雑用などをしながら監督や編集の仕事に就くときを伺っていた。そしてロジャー・コーマンの元で知り合ったジョー・ダンテと共同で、スカイダイビングから始まるカルト映画の傑作『ハリウッド・ブルバード』（76）を手掛けている。

　ポップミュージックとの関わりという点では、ニューヨークのイースト・ヴィレッチにある伝説的なライブ会場フィルモア・イーストの案内係として働いていた経歴を持っている。アラン・アーカッシュは『ロックンロール・ハイスクール』の中でも、ラモーンズのライブ会場の入り口で来場者のボディチェックをする係員としてノンクレジット出演している。そして彼は、ラモーンズの3枚目のスタジオアルバム「ロケット・トゥ・ロシア」を史上最高のロックレコードと位置付けている。

『ロックンロール・ハイスクール』© 1979 New World Productions Inc. All Rights Reserved.

　企画当初ロジャー・コーマンによって『ディスコ・ハイ』と名付けられていた本作は、ディスコ・ミュージックで学校は破壊できないという理由でアラン・アーカッシュに反対される。そのためアラン・アーカッシュはロジャー・コーマンの前で、ザ・フーのピート・タウンゼントがギターを叩きつける実演をする。学校を爆破するために、いかにロックのエネルギーが必要かを説くためだ。高校を爆破するというアイデアは、同じくティーンによる暴動が描かれ、高い評価を得ることに成功したジョナサン・カプラン監督による『レベルポイント』（79）への対抗意識があったという。『レベルポイント』は、ニルヴァーナのカート・コバーンがこよなく愛した映画としても知られている。

　アラン・アーカッシュは『ロックンロール・ハイスクール』に影響を与えた映画として、ジャン・ヴィゴの『新学期操行ゼロ』（33）、フランク・タシュリンの『女はそれを我慢できない』（56）、リンゼイ・アンダーソンの『if もしも....』（68）等、複数の映画を挙げている。挙げられたリストの内もっとも大きなインスピレーション元は、リチャード・レスターが手掛けたザ・ビートルズ主演の『ハード・デイズ・ナイト』（64）だろう。アラン・アーカッシュは『ロックンロール・ハイスクール』の撮影前に、ラモーンズのメンバーを招いてこの作品の鑑賞会を自宅で開いている。

　ザ・ビートルズのメンバー全員が影響を受けたという、50年代のロックンロールが描かれた『女はそれを我慢できない』、そのザ・ビートルズが主演する『ハード・デイズ・ナイト』、そして『ロックンロール・ハイスクール』という映画史の美しい系譜が、ここに浮かび上がる。ラモーンズのメンバーもまた『ハード・デイズ・ナイト』をこよなく愛していた。『ロックンロール・ハイスクール』とラモーンズの出会いには、運命的なものを感じずにはいられない。

ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン