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『ファミリー・プロット』ヒッチコックからの最後のウインク

(c)Photofest / Getty Images

『ファミリー・プロット』ヒッチコックからの最後のウインク

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ヒッチコック最後の作品を飾った、ジョン・ウィリアムズの音楽



 本作の音楽を担当しているのは、ジョン・ウィリアムズ。そう、『ジョーズ』(75)、『スター・ウォーズ』(77)、『スーパーマン』(78)、『E.T.』(82)、『シンドラーのリスト』(93)などで知られる映画音楽界の巨匠である。当時の彼は、『ジョーズ』でアカデミー作曲賞&グラミー賞に輝いたばかり。その実力をユニバーサルの重役が高く評価し、ヒッチコックに推薦したのだ。


 スティーヴン・スピルバーグ作品で知られるジョン・ウィリアムズが、ヒッチコック最後の作品を手がけたというのは何とも感慨深い。長きに渡り娯楽映画の第一人者として君臨してきたヒッチコックと、そのスピリットを受け継いでハリウッドの帝王となったスピルバーグ。その歴史的転換点の結び目として、『ファミリー・プロット』が存在しているように思えるからだ。



『ファミリー・プロット』(c)Photofest / Getty Images


 スピルバーグ絡みでいうと、ひとつ面白い逸話がある。この映画の撮影現場を一目見ようとしたスピルバーグが、ヒッチコックによってセットから追い出されてしまったのだ。自分に匹敵するくらいの、いや、ひょっとしたら凌駕するくらいの映画的才能に満ちた若者に、嫉妬心を抱いたからか?もしくは、ヒッチコックが『めまい』で開発した“めまいショット”(カメラをズームインさせつつ、被写体からドリーアウトで引き離すことで背景の奥行きを変化させるテクニック)を、スピルバーグが『ジョーズ』であからさまに模倣したことに憤慨したからか?いずれにせよ、ヒッチコックがスピルバーグに対して何らかの感情を抱いてたことは、間違いなさそうだ。


 『ファミリー・プロット』は、いかにもジョン・ウィリアムズらしい印象的なテーマ、華麗なオーケストレーションが楽しめるが、時折インサートされるハープシコードの音色が絶妙なアクセントになっていて、全体的に軽妙な雰囲気を醸し出している。なんでもヒッチコックは、犯罪シーンでも明るいトーンの劇伴を入れるようジョン・ウィリアムズに指示したらしい。曰く、「ウィリアムズさん、殺人は楽しいものですよ」。





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