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『トゥモロー・モーニング』舞台のトップスターが映画でも活躍する。その難しさを克服する俳優の出現

©Tomorrow Morning UK Ltd. and Visualize Films Ltd. Exclusively licensed to TAMT Co., Ltd. for Japan

『トゥモロー・モーニング』舞台のトップスターが映画でも活躍する。その難しさを克服する俳優の出現

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『トゥモロー・モーニング』あらすじ

ロンドンのテムズ川沿いに暮らすキャサリンとビル。画家と小説家になることをそれぞれ夢見て、大恋愛の末に結婚。10年が経ち、可愛い子どもにも恵まれ、キャサリンは現代アートの有望作家、ビルは売れっ子コピーライターとして成功していたが、いつの間にか心がすれ違い離婚を決意していた。離婚前夜、ふたりは出会った頃の結婚前夜の記憶を辿りはじめる…。


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トニー賞に輝いても映画では脇役に



 ハリウッドや英国のスター俳優が、NYブロードウェイ、またはロンドンのウエストエンドの舞台に挑戦して成功するパターンは多い。彼らの多くがじつは映画やドラマで活躍する以前に、舞台で経験を積んでいたりもするからだ。しかしミュージカルとなると話は別だ。歌唱力、およびダンスの技術が生の舞台で試される。映画でミュージカルに挑戦したスターにとっても、真のテクニックが観客にさらされる舞台ミュージカルはハードルが高い。


 わずかな成功例の一人が、ヒュー・ジャックマン。『X-メン』(00)のウルヴァリン役でブレイクし、アクション大作でも主役を張る“映画スター”になった後に、ブロードウェイの「ザ・ボーイズ・フロム・オズ」で主役を務め、トニー賞のミュージカル主演男優賞を受賞した。その後も1957年初演の名作「ザ・ミュージック・マン」の主演など、ヒューはブロードウェイの“顔”になっている。もともとオーストラリアの無名時代に「美女と野獣」など舞台ミュージカルの経験があったので、映画、舞台の両方で活躍できる素地はあったのだ。その他にもグレン・クローズ(「サンセット大通り」)、マシュー・ブロデリック(「努力しないで出世する方法」)、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(「リトル・ナイト・ミュージック」)など、ミュージカルでトニー賞主演賞を受賞した、いくつかの成功例はある。



『トゥモロー・モーニング』©Tomorrow Morning UK Ltd. and Visualize Films Ltd. Exclusively licensed to TAMT Co., Ltd. for Japan


 では歌って踊れる舞台ミュージカル界の才能なら、映画界でも活躍できるのではないか。その逆方向はなかなかうまくいかないのが実情である。チタ・リヴェラ、パティ・ルポーン、バーナデット・ピーターズ……といった、トニー賞主演賞を複数回受賞したブロードウェイのレジェンド的な大スターたちも映画では大きな役をもらえなかったりする。チタはミュージカル映画『スイート・チャリティー』(68)こそメインキャストの一人だったが、自身の舞台での当たり役だった『シカゴ』(02)では囚人役で短い場面での出演だった。パティが映画で認識されたのは『ドライビング Miss デイジー』(90)での主人公の息子の妻役くらい。バーナデットも『アニー』(82)などミュージカル映画では脇役で、映画で目立ったのはウディ・アレンの『アリス』(90)あたりのみ。「ミス・サイゴン」の主役でブロードウェイの大スターになったレア・サロンガは、ディスニーの『アラジン』(92)や『ムーラン』(98)でプリンセスを任されたが、アニメということで歌唱力を買われ、声のみの出演であった。


 やはり映画と舞台では、トップスターの世界的な認知度に差があるからだろう。世界をマーケットにするハリウッド映画の場合、人気の舞台ミュージカルが映画化される際に、映画界のスターたちが起用されるのが常識だった。ただここ数年、その風潮に変化もみられる。『ディア・エヴァン・ハンセン』の映画版(21)では、舞台版オリジナルキャストで、映画やドラマでの活躍は限定的だったベン・プラットが主役に起用された。『ウエスト・サイド・ストーリー』(21)でも、同作でアカデミー賞助演女優賞に輝いたアリアナ・デボーズのほか、メインのベルナルド役、デヴィッド・アルバレス、リフ役のマイク・ファイストは、ブロードウェイのキャリアで抜擢された才能である。一般的な知名度より、真の実力を起用したいという、映画界の野心が少しずつ感じられるようになった。





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