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『そばかす』ヒロインともう一人のヒロイン

(c)2022「そばかす」製作委員会

『そばかす』ヒロインともう一人のヒロイン

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距離感の反復



 「もう友達じゃないから」


 会社の同僚に付き添った飲み会を皮切りに、気まずい会合は何度も反復される。佳純の母親(坂井真紀)は、娘に無断でお見合いの場を用意する。会話のための会話に終始する空虚な料亭の一室。ここで出会った木暮(伊島空)は、佳純と同じく恋愛や結婚に価値観を置いていないと告白する。意気投合した二人は急速に距離を縮めるが、恋愛要素から逃れられていたはずの二人の関係は、木暮の変化により破局を迎える。家に帰った佳純は、妹(伊藤万理華)に「(木暮とは)もう友達じゃないから」と告げる。


 このときの佳純の何気ない台詞は、大人の人間関係とはいったい何なのか?ということを改めて考えさせられる。保育園における園児同士の背伸びをした恋愛未満の恋愛では、付き合う付き合わないを巡って、女児の遊戯のように可愛らしいインスタントな三角関係が描かれていた。「もう友達じゃないから」。佳純がふと呟く子供のような言葉は、園児たちの恋愛ごっこと佳純と木暮の関係がそれほど遠くにないことを示している。アサダアツシの脚本は、ヒロインに敢えて子供のような言葉を用意することで大人と子供の間にある階層を剥がしている。そこには大人の関係性そのものへの問いが生まれている。



『そばかす』(c)2022「そばかす」製作委員会


 気まずい会合は更に反復される。蘇畑家が家族で焼肉を食べるシーンの演技空間の持続。妹夫婦の口喧嘩を含むこの演劇的なシーンでは、修羅場になる空気を察知した母親がテレビを消すタイミング、リモコンを手に取る振り向き方までが見事だ。一つの空間で複数の登場人物がそれぞれの気まずさをコミカルに表出させていくこのシーンは、これまでの玉田映画の到達点といえる。このシーンで佳純がとる思いがけない行動、三浦透子のモーションの素晴らしさ。


 そして本作には不満や怒り、違和感をほとんど表明しない佳純の気持ちを代弁してくれる人物がいる。佳純の中学時代の同級生、真帆(前田敦子)という「もう一人のヒロイン」が『そばかす』という映画の強度を決定付けていく。





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