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『ボディ・ダブル』映画への淫らなラブレター ※注!ネタバレ含みます。

(c)Photofest / Getty Images

『ボディ・ダブル』映画への淫らなラブレター ※注!ネタバレ含みます。

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※本記事は物語の結末に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


『ボディ・ダブル』あらすじ

ハリウッドの豪邸に住む友人から留守を預かったB級映画専門の売れない俳優ジェイクは、夜毎窓辺でストリップを演じる隣の家の美女グロリアを望遠鏡から覗き、熱い視線を送っていた。ある夜、いつものように覗き見をするジェイクは、突然彼女が何者かに惨殺される現場を目撃してしまう


Index


全方位的なヒッチコック映画リファレンス



 下劣で、下品で、猥雑で、低俗。ブライアン・デ・パルマ映画にべっとりと貼りついた、この圧倒的B級感は何なのだろう(褒めてます)。アル・パチーノ主演の『スカーフェイス』(83)でメジャー監督として認知され、てっきり今後はビッグ・バジェットの大作を手がけるものと思いきや、次の作品がより下劣で、より下品で、より猥雑で、より低俗なエロティック・スリラー『ボディ・ダブル』(84)である。サイコーではないか。


 デ・パルマがこの映画のアイディアを思いついたのは、『殺しのドレス』(80)の撮影中のことだった。アンジー・ディキンソンが序盤でシャワーを浴びているシーンで、ヌードを吹き替え(ボディ・ダブル)に演じてもらったとき、彼に天啓が閃く。ボディ・ダブルをモチーフにしたサスペンス映画って、結構イケるんじゃないか?さっそく彼は脚本家ロバート・J・アヴレッチの元を訪れ、共同でのシナリオ執筆を依頼する。アブレックは、若いフィルムメーカーの情熱に圧倒された。


『ボディ・ダブル』予告


「ブライアン・デ・パルマは、『ボディ・ダブル』の大まかな構想を私に話してきた。無実の男が美しい女性によって殺人事件に巻き込まれ、美しいブロンド女性の助けを借りてその謎を解くという、ヒッチコック的なテーマに私はすぐに反応したんだ。ブライアンも私も、アルフレッド・ヒッチコックの映画の大ファンだったし、今もそうだ。『裏窓』(54)と『めまい』(58)を上映して、ヒッチコックがこの2つの作品で用いたストーリーテリングについて議論したものさ。つまりある意味で、私はデ・パルマのアイデアをヒッチコックのアイデアに置き換えて仕事をしていたんだよ」(*1)


 車椅子生活を送るカメラマンが、アパートの部屋から事件を目撃する『裏窓』。高所恐怖症の元刑事が、ミステリアスな人妻に心を奪われる『めまい』。デ・パルマとアブレックは、ヒッチコックの代表作2本をミックスして、「閉所恐怖症の売れない俳優ジェイク(クレイグ・ワッソン)が、夜な夜な女性のセクシーダンスを望遠鏡で覗き見してたら、殺人事件を目撃してしまう」という、B級感丸出しのプロットを創り上げる。資産家の妻の財産を狙った夫が真犯人だった、というオチは『ダイヤルMを廻せ!』(54)オマージュだろう。


 『愛のメモリー』(76)で『めまい』、『殺しのドレス』で『サイコ』(60)をあからさまに参照してきたデ・パルマは、『ボディ・ダブル』ではヒッチコック映画を全方位的にリファレンスしてしまったのだ。




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