ラスト・オブ・ザ・インディペンデント
チャーリー・ヴァリック農薬散布会社の作業員服には、こんな言葉が刻まれている…Last of the Independents(ラスト・オブ・ザ・インディペンデント)。この場合、“最高の自営業者”とでも略した方がいいのだろうか。このキャッチフレーズは映画のポスターや予告編にも登場し、映画全体で印象的に使われている。
ドン・シーゲルは、映画のタイトルも「ラスト・オブ・ザ・インディペンデント」にしたいと考えていた(原題は主人公の名前である『Charley Varrick』)。この場合は、“最後の一匹狼”とでも略すべきか。それはハリウッドにおける彼の立ち位置の表明であり、「自分が最後のインディペンデント映画作家である」という宣言なのだろう。また本作は、彼のプロダクション・クレジット“a siegel film” が初めて使われた作品でもある。雇われ監督ではなく、自分が撮りたい題材を、自分の裁量で作れる立場になった喜びが、「ラスト・オブ・ザ・インディペンデント」という言葉に込められているのかもしれない。
『突破口!』(c)Photofest / Getty Images
だからこそ、この映画にはドン・シーゲル的なものが充満している。善悪を超えたアンチモラル性。あからさまな暴力。センチメンタリズムを排した、乾いたタッチ。彼の作品を一本だけ挙げるとするならば、筆者は躊躇なく『ダーティハリー』よりも『突破口!』を選ぶ。
余談だが、この映画に触発されたミュージシャンがいる。アイルランドが生んだギター・ヒーロー、ロリー・ギャラガーだ。彼が1978年にリリースした「Photo Finish」というアルバムの8曲目には、「Last of The Independents」というナンバーが収録されている。彼もまた、ブルース・ロックというジャンルにおいて“最後の一匹狼”であり続けたのだ。
(*1) http://www.cineoutsider.com/reviews/bluray/c/charley_varrick_br.html
(*2) https://cinephiliabeyond.org/charley-varrick/
文:竹島ルイ
ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。
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