アーティスト・エクイティが目指す真の公平性
現在ベン・アフレックは、盟友マット・デイモンとタッグを組んで、新しい試みに挑戦しようとしている。新たな製作会社アーティスト・エクイティを立ちあげて、最高経営責任者(CEO)に就任。プロジェクトの商業的成功と同時に、あらゆるクリエイターに公平な利益分配を実現させようとしているのだ。
ギャランティーとは別に、収益の中から何%かを支払うインセンティブ契約は、今では決して珍しいものではない。古い例で恐縮だが、『バットマン』(89)でジョーカーを演じたジャック・ニコルソンは、出演料自体は600万ドルだったものの、興行収入とおもちゃの売上のインセンティブ契約を結んでいたため、5,000万ドル以上を稼いだといわれている。
トム・クルーズの『トップガン マーヴェリック』(22)出演料は、1,300万ドルと言われている。これはこれですごい数字だが、ある報道によればパラマウント・ピクチャーズの利益の10%が別に支払われる契約になっているんだとか。それを加味すると、ギャランティーは天文学的数字になる。もはや一般ピーポーには、想像もできません。
だがそれは、ドウェイン・ジョンソン、ウィル・スミス、レオナルド・ディカプリオなど、一部のスター俳優だけに許された特権。ベン・アフレックは、それをあらゆるスタッフやキャストに対しても門戸を広げようとしている。社名にある「エクイティ」とは公平性という意味だ。
『AIR/エア』©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
「スタジオの人たちは、机の後ろに座って電話をかけているだけだ。実際に映画を作り、すべての仕事をこなさなければならないのは、アーティストたちの方なのに。私はもう謙虚になったよ。(中略)私は今、準備ができていると感じている。人生の中で、十分な経験と自信と自己肯定感を得られる時期にさしかかっているんだ」(*2)
そのアーティスト・エクイティが初めて手がけた作品が、本作『AIR/エア』。当初はアマゾン プライム・ビデオで独占配信される予定だったが、テスト上映での反応が上々だったために、サウス・バイ・サウスウエストでのプレミア上映を経て、世界各国で劇場公開されることとなった。
アーティスト・エクイティは『AIR/エア』も含めて3本の映画を公開する予定で、今後は年間5本の映画製作を目標にするという。