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『AIR/エア』“映画界のエア ジョーダン”を目指す、ベン・アフレックの挑戦

©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

『AIR/エア』“映画界のエア ジョーダン”を目指す、ベン・アフレックの挑戦

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“映画界のエア ジョーダン”



 マイケル・ジョーダンはこの映画には直接関わっていないが、ベン・アフレックによれば母親のデロリス役にヴィオラ・デイヴィスを推薦したのは、マイケル自身だったという。


 確かに、本作の真の主役は彼女だろう。デロリスは並外れた交渉術を発揮して、契約料のみならず、エア ジョーダンの売り上げの一部を受け取ることに成功する。下手な役者が演じてしまえば、ビッグ・マネーに取り憑かれた守銭奴にしか見えない。世界で誰よりもマイケル・ジョーダンを信じ、彼を守ろうとする母親としての愛情と威厳が必要となる。ヴィオラ・デイヴィスは、最良にして最適なキャスティングだったのだ。


 グッズの売上げがスポーツ選手に還元されるインセンティブ契約は、当時は非常に珍しいものだった。これがロールモデルとなって、現在ではリオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウド、レブロン・ジェームズといった超一流アスリートがメーカーと独占契約を交わし、莫大な報酬を得るようになっている。企業とスポーツ選手は、WIN-WINな関係を築いているのだ。



『AIR/エア』©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.


 だが本作では、(少なくとも筆者の目には)トップ・アスリートだけがビッグ・マネーを手にすることができる仕組みの是非について、周到に回答を避けているように思える。ソニーはこの契約に明らかに及び腰だったし、CEOのフィル・ナイト(ベン・アフレック)は今後のオペレーションが困難になると嘆いていた。おそらくだがベン・アフレックは、ドウェイン・ジョンソンら一部のスター俳優だけに許された特権と、同じような構造を見出したのではないか。


 エアジョーダンは、スポーツ界の契約のあり方を大きく変えた。だがそれは、あくまで一握りのスーパースターのみに与えられた恩恵だった。アーティスト・エクイティはそこからさらに踏み込んで、全てのクリエイターに利益を還元しようとしている。奇しくも『AIR/エア』で紡がれる物語は、“映画界のエア ジョーダン”を目指すベン・アフレックの挑戦と重なって見える。


 俳優として、映画監督として、プロデューサーとして、クリント・イーストウッドに比肩し得るこの男は、これから新しい歴史を刻み付けていくことだろう。


(*1)https://www.hollywoodreporter.com/feature/ben-affleck-air-production-company-grammys-memes-justice-league-1235353301/

(*2)https://movies.mxdwn.com/news/matt-damon-ben-affleck-say-new-production-company-aims-for-more-equitable-talent-experience/ 



文:竹島ルイ

ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。



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『AIR/エア』

絶賛公開中

配給:ワーナー・ブラザース映画

©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

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