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『シェルタリング・スカイ』坂本龍一の名スコアと光の魔術師の美しき融合。現代では違和感のある表現も

(c)Photofest / Getty Images

『シェルタリング・スカイ』坂本龍一の名スコアと光の魔術師の美しき融合。現代では違和感のある表現も

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『シェルタリング・スカイ』あらすじ

1947年、ニューヨークから北アフリカに旅行でやってきたポートとキットのモーレスビー夫妻。倦怠期を迎え、愛も夢も見失ってしまった2人は、この北アフリカで何かを発見できるのではないかと考えていた。しかし旅行を続ける中で、夫婦関係はかえって険悪になってしまい、夫婦はそれぞれ浮気に走り、他人によって安らぎを得ようとする。そして、この果てしない砂漠の旅は、過酷さを極めていく…。


Index


名匠のオリエンタル3部作で作曲を担当



 坂本龍一が手がけた映画音楽では、自身も出演した『戦場のメリークリスマス』(83)や、アカデミー賞作曲賞に輝いた『ラストエンペラー』(87)が代表作とされるも、この『シェルタリング・スカイ』(90)のスコアも忘れがたい。なかなか映画ファン以外には知られていなかったが、一時引退生活を送っていたフィギュアスケートの高橋大輔が、現役に復活した2018〜2019年のシーズン、ショートプログラムで使ったのが『シェルタリング・スカイ』の音楽だった。哀切でドラマチックなそのメロディは、まさに氷上のパフォーマンスにぴったりであったのと同時に、坂本龍一の才能を再認識させた。


 『ラストエンペラー』の3年後、同作のベルナルド・ベルトルッチ監督と組んだのが『シェルタリング・スカイ』であり、さらにその3年後の『リトル・ブッダ』(93)でも坂本は作曲を担当。この3作はベルトルッチの「オリエンタル・トリロジー(3部作)」と呼ばれる。


『シェルタリング・スカイ』予告


 1947年、ニューヨークに暮らすポートとキットのモーレスビー夫妻がその関係に倦怠をおぼえ、友人の若者タナーを伴った北アフリカへの旅行で愛を取り戻そうとする物語。モロッコの港町タンジールに始まり、サハラ砂漠を縦断しながらアルジェリア、マリへと向かう彼らには、未知の体験、過酷な運命が待ち受ける。ベルトルッチ作品らしく大人の愛と性を濃厚に、赤裸々に、屈折感もたっぷりに表現しており、坂本のスコアは主人公2人の感情が高ぶるシーンでその効果が鮮やかに発揮される。映像の記憶と音楽がひとつになる稀有な例と言えるだろう。


 『シェルタリング・スカイ』にはもう一人、リチャード・ホロウィッツが作曲家として名を連ねており、彼は北アフリカ風の音楽パートを手がけた。とはいえ、オープニングでは「Music by Sakamoto Ryuichi」と単独でクレジットされ、坂本のスコアがメインである。『ラストエンペラー』も坂本、デヴィッド・バーン、中国の蘇聡の3人がスコアを書き、一方で『リトル・ブッダ』は坂本の単独の仕事であった。坂本のアカデミー賞受賞は『ラストエンペラー』の1回のみだったが、ゴールデングローブ賞では『ラストエンペラー』、『シェルタリング・スカイ』で2度の作曲賞に輝いている。



『シェルタリング・スカイ』(c)Photofest / Getty Images


 『シェルタリング・スカイ』でその坂本のスコアを際立たせるのが、名カメラマン、ヴィットリオ・ストラーロの映像であるのは間違いない。ベルトルッチとは『暗殺の森』(70)、『ラストタンゴ・イン・パリ』(72)など数多くの作品で組み、もちろんオリエンタル・トリロジーにも参加。その他にも『地獄の黙示録』(79)、『レッズ』(81)、近年はウディ・アレン作品で才能を発揮している。アカデミー賞は3度受賞。“光の魔術師”という異名をもつ世界最高峰の撮影監督だ。





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