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『ザ・フォッグ』映画のなかの「霧」はどのように描かれてきたのか?

(c)Photofest / Getty Images

『ザ・フォッグ』映画のなかの「霧」はどのように描かれてきたのか?

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着想源となったイギリスのホラー映画



 『ザ・フォッグ』の物語は、カーペンターがイギリス南部を旅行中、霧の立ち込めるストーンヘンジでふと感じた恐怖から生まれたという。この霧のなかから何か恐ろしいものが出てくるのではないか? もし幽霊や怪物が現れたらどうなるのか? こうしてカーペンターは、架空の町を舞台にした亡霊の物語を構想する。


 イギリスのクエンティン・ローレンス監督によるSFホラー『The Trollenberg Terror』(58、日本未公開)も着想源のひとつになった。スイスのトローレンベルク山で、登山中の男の頭が何者かによって切り取られる、という事件が起き、事件を調べにきた国連の調査員は、これが3年前にアンデスで起きた事件とそっくりだと気づく。山が謎の雲に覆われた途端、山にいた人々が次々に惨殺されていった事件だ。まさに今のトローレンベルク山は、不気味な雲に覆われていた。



『ザ・フォッグ』 (c)Photofest / Getty Images


 この映画で雲のなかから現れるのは、一つ目にタコのような足を持った巨大な怪物。『ザ・フォッグ』のように、光る不気味な霧のなかから黒い影のような亡霊が現れる、といった描写はなく、『ミスト』の世界観に近いモンスター映画だ。しかも怪物の造形はあまり精巧とはいえず、むしろ怪物の姿が現れない前半部分のほうがホラー映画としては成功しているように思う。とはいえ、山小屋にいた男が、不気味な雲が迫ってきたのに気づきあわててドアを閉める描写や、それでもドアの隙間からゆっくりと雲(霧)が忍び寄る様は、カーペンターによってそのまま引用されたと言ってもいい。また、最後に調査員たちが山の上の天文台に逃げ込み立て籠るのは、『ザ・フォッグ』の灯台のなかのラジオ局というシチュエーションに影響を与えたはずだ。





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