1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ザ・フォッグ
  4. 『ザ・フォッグ』映画のなかの「霧」はどのように描かれてきたのか?
『ザ・フォッグ』映画のなかの「霧」はどのように描かれてきたのか?

(c)Photofest / Getty Images

『ザ・フォッグ』映画のなかの「霧」はどのように描かれてきたのか?

PAGES


『ザ・フォッグ』あらすじ

100周年記念祭で沸き立つ港町アントニオ・ベイ。夜、海から流れてきた濃い霧で町は覆われ、続々と怪奇現象が起こる。霧と共に100年の時を経て甦った亡霊たちは、怨みを晴らすために次々と住民を惨殺していく。


Index


映画のなかの「霧」



 映画では、霧とはどんな道具にもなる。恐ろしい怪物の姿を隠す不気味な装置。犯人の姿を見えなくさせる道具。恋人たちの間に漂う神秘的な背景。モノクロ映画でもカラーでも、画面を白く覆い尽くす霧は、映画のあらゆるジャンルにおいて利用されてきた。


 タイトルからして正真正銘の「霧」映画であるフランク・ダラボン監督『ミスト』(07)は言うまでもなく、霧が効果的に使われる映画は数多い。最近ではパク・チャヌク監督の『別れる決心』(22)で、一日中霧が立ち込める架空の街イポが登場したのが記憶に新しい。これはキム・スヨン監督『霧』(67)へのオマージュであることが劇中でも示されるが、おそらく、ミケランジェロ・アントニオーニ監督『赤い砂漠』(64)の煙と霧に覆われた工業地帯を歩くモニカ・ヴィッティの姿も、タン・ウェイ演じるソレの造形に大きな影響を与えたはず。


『別れる決心』予告


 映画のなかの霧といえば、アルフレッド・ヒッチコック監督『めまい』(58)は外せない。キム・ノヴァク演じるマデリンを尾行するジェームズ・スチュアートが、墓地で彼女を発見する有名なシーン。「定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー」(晶文社)によれば、この場面は「ぼんやりと夢のような、謎めいたムードをだす」ため、画面にはフォッグ(霧)フィルターをかけて撮影され、「あかるい太陽がかがやいているところに一面に霧がたちこめているような、淡いグリーンの色調」がつくられた。この緑がかった霧は、後半、キム・ノヴァク演じるマデリンにそっくりな女性ジュディが再びジェームズ・スチュアートの前に姿を現すホテルのシーンで、鮮烈に再現される。窓の外で光るグリーンのネオンが部屋のなかを照らし、あたかも緑色の霧のなかから、死んだはずのマデリンがよみがえったように見える。どうやら霧には、人ならざる者をよみがえらせる力があるようだ。





PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
counter
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ザ・フォッグ
  4. 『ザ・フォッグ』映画のなかの「霧」はどのように描かれてきたのか?