ゼロから創り出された打ち上げ映像
こうして盤石な布陣に支えられながら製作入りした『アポロ13』は、ロン・ハワード監督にとっても極めて思い入れの深い作品となった。後年『ビューティフル・マインド』(01)で念願のオスカーを獲得するハワードだが、幅広い世代への浸透度でいうと『アポロ13』の方が数段上。もしかするとハワード作品における「最も愛される一本」と言えるかもしれない。ただ、最良の題材とは裏腹に、宇宙空間でのミッションを映像化するのは決して容易いことではない。当然ながらハワードにはいくつもの妥協なき挑戦が課せられた。
例えば、高揚感あふれる「ロケット打ち上げシーン」をどう描くかも腕の見せ所だ。ここで嘘くさくなってしまってはすべてが台無しである。当初は既存の記録映像などを活用しようかという案もあったそうなのだが、ハワード監督や技術スタッフらはもっと高みを目指し、映画ならではの「ありえないアングル」からのド迫力映像をゼロから創り上げる方向へとシフトした。
『アポロ13』(c)Photofest / Getty Images
そこではミニチュアのロケットが上昇していく映像に、噴射されて燃え上がる炎、剥がれ落ちていくロケット表面の細かな氷の塊など、何層ものCGが緻密に折り重ねられているという。今でこそ我々の目も肥えて、これらがCGによるものだと判別がつくが、公開当時は実際のロケット打ち上げの記録映像だと思い込む人もいたほどだったとか。