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『アポロ13』宇宙空間における絶望的状況を乗り越えた、愛すべき不屈の物語

(c)Photofest / Getty Images

『アポロ13』宇宙空間における絶望的状況を乗り越えた、愛すべき不屈の物語

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スピルバーグの助言で実現した無重力撮影



 そしてもう一つ、ハワードがこだわり抜いたポイントがある。それは本作の随所に挟み込まれる「無重力場面」だ。古典的ワイヤーを使って俳優たちを吊り上げるか。それとも水中を使った何らかの撮影方法があるのかどうか。思い悩んだハワードが相談を持ちかけたのが、友人のスティーヴン・スピルバーグだった。


 二人は様々な可能性について意見を交わし、そこでスピルバーグが「可能かどうかはわからないが・・・」と切り出したのが、NASAで採用されている"The Vomit Comet"という手法である。これは、ボーイング社製のKC-135を用いて行う特殊な訓練のこと。地上からのテイクオフ後、放物線を描くように機体を急上昇させ、目標高度に達したあたりから今度は一気に急降下させる。この時、全身がふわりと浮かび上がる無重力状態がほんの20秒ばかり生じる。これを有効に使えば、理想通りのシーンが撮影できるかもしれないーー。ハワードはこの可能性に賭けてみようと決意し、スタッフの粘り強い交渉もあって、NASA側の協力を取り付けることに成功した。



『アポロ13』(c)Photofest / Getty Images


 もちろん、たった一回のトライでカメラに収められる秒数はたかが知れている。製作スタッフはKC-135の機内に美術セットをしっかりと固定。俳優や撮影チームも同乗した上で、何度も何度もこの飛行を繰り返して、ざっと計算しても600回以上に及ぶ無重力を体験した。なので、本作の無重力場面はホンモノなのだ。いや厳密に言うと、顔や体だけがアップとなる場面は地上のセットで体をゆらゆらと揺らしながら撮られたものらしいのだが、全身がしっかりと映り込むシーンは全てKC-135を使って撮影が敢行された。


 その点をしっかり意識して鑑賞すると、この映画がいかにこだわりを持って極限までリアリティを追求して生み出されたものかがわかり、作り手たちの不屈の情熱に胸が熱くなる。





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