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『アンストッパブル』トニー・スコット最期の傑作。シンプルな構造にみなぎる躍動感とリアリティ

(c)Photofest / Getty Images

『アンストッパブル』トニー・スコット最期の傑作。シンプルな構造にみなぎる躍動感とリアリティ

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舞台の町がトニー・スコットに思い起こさせたもの



 繰り返しになるが、『アンストッパブル』は98分間、無駄がなく、疾走と勢いに満ち、それでいてスカッと爽快。観る者に充実感と笑顔をもたらしてやまない。これがトニー・スコットとのお別れの作品になるなんて、本当に関係者やファンの誰が想像しただろう。


 この映画の音声解説に耳を傾けていると、ひとつハッとさせられる部分があった。舞台の一つとなるペンシルベニアの工業地帯の景観を受けて、トニーは「なんと目を見張る光景なんだろう。私が育ったイギリス北東部にも似ていて、産業革命の名残を感じさせるかのよう。本当に故郷を思い出すよ」と語っていた。



『アンストッパブル』(c)Photofest / Getty Images


 これを聞いた筆者は、思うところあって、トニー・スコットの原点となる作品に立ち戻ってみたくなった。それは兄リドリーが人生で初めて手掛けた作品として知られる『少年と自転車』(65)である。


 リドリー作品『デュエリスト/決闘者』(77)DVDの特典映像として収録されているこの短編では、16歳になったばかりの少年が、大人と子供の心理的な狭間で様々な思いを巡らしながら、自転車で駆け抜けていく。この主人公を演じているのが、当時まだ何者でもなかった頃の16歳のトニー・スコットなのだ。


 本作では全編にわたってイギリス北東部にあるハートルプールの街並みが刻まれる。トニーが音声解説で語っていた「故郷」そのものの景色として当てはまるかどうかは不明だが、少なくともイギリス北東部であることは間違いない。広大なる工業地帯と煙突から立ち上る煙、錆びた鉄の香りが立ち込めるのも印象的だ。ちなみにリドリー&トニーは共に、このハートルプールの大学でアートを学んだ経歴の持ち主でもある。





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