『マイ・ボディガード』あらすじ
ジョン・クリーシーは元CIAの特殊部隊員。16年間、任務で人を殺めてきた彼は、心を閉ざし、生きる希望を見失っていた。そんなクリーシーだが、ある日、メキシコで護衛の仕事をしている先輩レイバーンから新しい仕事を請け負うことに。それは、誘拐事件が多発するメキシコ・シティに住む実業家の9歳の娘「ピタ」のボディガードだった。ピタの純真無垢な心と触れ合ううちに、凍り付いていたクリーシーの心も溶かされてゆく…。
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今なお語り継がれるダイナミックなトニー・スコット節
名匠トニー・スコット(1944〜2012)が亡くなって今年で10年が経つが、その後も人生の折々にスコット作品を再見するにつけ、彼がもうこの世にいないなんて信じられなくなる。というのも、彼の映画はどれも腹にズシンと来る重量感に満ちているし、それと連動するカメラワークも常にダイナミック。それらは全くもって死とは真逆のベクトルを持った魂の躍動のように思えるからだ。
そんな彼のキャリアは、80年代、90年代、2000年代、それぞれの時代ごとに芸術性と当時の空気感を妥協なく融合させ、”深み”を帯びながら織り成されていった。
『マイ・ボディガード』(c)Photofest / Getty Images
そして今、04年の『マイ・ボディガード』について考えるとき、自ずと浮かび上がってくるのは、3つの時代それぞれに関連する特色---。
すなわち、この映画化の企画がもともと80年代、トニー・スコットがまだ映画監督として駆け出しの頃にオファーされながら、結局その時は実現に至らなかった作品であること。また90年代に『クリムゾン・タイド』(95)で組んだデンゼル・ワシントンを、時を経て再び主演に据えた作品であること。なおかつ2000年代、ワシントンとの4本におよぶコラボレーションの最初の流れを決定づけた重要な作品であるということだ。