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『ザ・クリエイター/創造者』インディーズ・スピリットが宿った、エモーショナルなSF映画

© 2023 20th Century Studios

『ザ・クリエイター/創造者』インディーズ・スピリットが宿った、エモーショナルなSF映画

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DIYなゲリラ撮影スタイル



 『ザ・クリエイター/創造者』は、予算規模としては決して大きくはない。今年公開された『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(23)や『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(23)の製作費がおよそ3億ドルに対し、本作は1億にも満たない8,000万ドル。『GODZILLA ゴジラ』(14)、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』と、超大作を立て続けに撮ってきた彼にとって、周囲にコントロールされず自分のクリエイティビティを発揮できる中規模作品に戻ることは、必然的な流れだったのだろう。


 それは、彼の名前を一躍世に知らしめた『モンスターズ/地球外生命体』(10)のDIYスピリットに立ち戻ることでもある。製作費は50万ドルにも満たないこのインディーズ映画では、必要最低限のクルーだけで中米を横断し、最適な撮影場所を発見するたびにゲリラ撮影する手法が採られていた。本作でも大々的なCGを前提にしたグリーンバックは使わず、少数クルーでのロケ撮影を敢行している。


 ギャレス・エドワーズは、ロン・フリック監督のドキュメンタリー『バラカ』(92)を参考にした映画の一つに挙げている。ナレーションはいっさいなく、世界6大陸・24ヵ国を股にかけて、教会、寺院、燃え盛る油田、活火山、地下鉄のターミナルといった風景が映し出される。圧倒的な映像美で描かれる、大自然と人間の営み。チベット仏教の僧衣のような格好をしたロボットが、子供と手を取り合って山道を歩いていく美しいショットは、おそらくこの映画からインスピレーションを得たのだろう。『ザ・クリエイター/創造者』には、強烈に心を掴まれてしまう短いショットが端々にインサートされている。



『ザ・クリエイター/創造者』© 2023 20th Century Studios


 本作の撮影監督を務めているのは、グレイグ・フレイザー。『ゼロ・ダーク・サーティ』(12)、『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』(16)、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(22)などの話題作を手がけ、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『DUNE/デューン 砂の惑星』(21)ではアカデミー撮影賞に輝いた名カメラマンだ。ギャレス・エドワーズとは、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』でタッグを組んだ盟友だ。彼は『エイリアン』、『ブレードランナー』、初期のスティーブン・スピルバーグ作品を参考にして、魅惑的なルックを創り上げた。


 「私たちのアプローチはドキュメンタリー・スタイルだったので、ドキュメンタリーを意識すると映画的なスタイルを保つのが難しくなる......だから、80年代を参考にするようにしたかったんだ。ドキュメンタリーのアプローチを高めつつ、映画レベルの美学を持ち込みたかった。そのために私たちは日々戦ってきたのです」(*3)


 グレイグ・フレイザーは、映画撮影用としてはかなり安価なソニーFX3というカメラを選択している。軽量で機動性に優れ、ロケーション撮影には最適。そして彼が求める80年代ルックを実現させるため、ヴィンテージのアナモフィックレンズを使っている。知恵と情熱によって、硬質で生々しい映像が生み出されたのだ。


 隅々にまでインディーズ・スピリットが宿った、エモーショナルなSF映画。そこには、作り手=創造者としての意思がはっきりと刻印されている。超大作SFを経て、ギャレス・エドワーズは還るべき場所に舞い戻ってきた。



(*1)、(*2)https://gizmodo.com/gareth-edwards-the-creator-rogue-one-secrecy-disney-fox-1850861168

(*3)https://variety.com/2023/artisans/news/the-creator-greig-fraser-dune-delay-rogue-one-james-gandolfini-1235747440/



文:竹島ルイ

映画・音楽・TVを主戦場とする、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」(http://popmaster.jp/)主宰。



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作品情報を見る



『ザ・クリエイター/創造者』

大ヒット上映中

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン 

© 2023 20th Century Studios

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