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『ザ・クリエイター/創造者』インディーズ・スピリットが宿った、エモーショナルなSF映画

© 2023 20th Century Studios

『ザ・クリエイター/創造者』インディーズ・スピリットが宿った、エモーショナルなSF映画

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SF映画、非SF映画からの引用



 ニューアジアのサイバーパンクな都市設計は『ブレードランナー』(82)や『AKIRA』(88)、ロサンゼルス上空で核弾頭が爆発するショットは『ターミネーター2』(91)、子供が世界の運命を握っているという設定は『トゥモロー・ワールド』(06)を思い起こさせる。どこかハリボテ感のあるロボットの造形は、まさに『スター・ウォーズ』(77)だ(さすがは、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)の監督!)。


 確かに本作は、既視感のある設定、ストーリー、ビジュアルで構築されている。だがギャレス・エドワーズが目指したのはオリジナリティーではなく、過去の偉大な先行例をマッシュアップさせることで、新たな神話を創造することだった。


 「SF映画について自分が好きなものをすべて投入して、鍋を十分にかき混ぜて、何かを引き出して、それ自体が映画のように感じられるように組み合わせようとしたんだ」(*2)


 『ザ・クリエイター/創造者』は、ギャレス・エドワーズによるオリジナル・ストーリー。まるでクエンティン・タランティーノのような手つきで、極めて自覚的に、<SF映画の引用に満ちたSF映画>を創り上げてみせた。だが筆者が興味深く感じたのは、SF映画ではなく非SF映画からの引用だ。



『ザ・クリエイター/創造者』© 2023 20th Century Studios


 ギャレス・エドワーズはインスピレーションの源となった作品として、前述の『ブレードランナー』や『AKIRA』のほかに、ピーター・ボグダノヴィッチ監督の『ペーパー・ムーン』(73)を挙げている。本作は1935年の大恐慌期を舞台に、詐欺師の男と母親を亡くした少女の旅をペーソスたっぷりに描くロード・ムービー。ライアン・オニールとテータム・オニールの父娘共演が話題となり、テータムはわずか10歳にしてアカデミー助演女優賞に輝いた。


 血縁関係のない2人は(実はその可能性も匂わせてはいるのだが)、アメリカ中西部を横断する旅のなかで、次第に本当の父娘のような絆を深めていく。擬似親子によるロードムービー、そしてそこから生まれる真実の愛というテーマが、『ペーパー・ムーン』の礎石。ニューアジアを横断する旅をしながら、ジョシュアとアルフィーが父娘関係を築いていく『ザ・クリエイター/創造者』もまた、同様の構造を有している。


 本作のワーキングタイトル(開発中に使用される仮の名称)は、『True Love』。ギャレス・エドワーズはアルフィーを人間ならざるものに設定することで、愛という感情はどのように生まれるのか?という壮大な実験を行なっているのだ。





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