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『ザ・クリエイター/創造者』インディーズ・スピリットが宿った、エモーショナルなSF映画

© 2023 20th Century Studios

『ザ・クリエイター/創造者』インディーズ・スピリットが宿った、エモーショナルなSF映画

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『ザ・クリエイター/創造者』あらすじ

遠くない近未来、人を守るはずのAIが核を爆発させた——。人類とAIの戦争が激化する世界で、元特殊部隊の〈ジョシュア〉は人類を滅ぼす兵器を創り出した“クリエイター”の潜伏先を見つけ、暗殺に向かう。だがそこにいたのは、兵器と呼ばれたAIの少女〈アルフィー〉だった。そして彼は“ある理由”から、少女を守りぬくと誓う。やがてふたりが辿りつく、衝撃の真実とは…


Index


人間ならざる存在へのシンパシー



Everything

Everything

Everything

Everything…


 レディオヘッドが2000年にリリースしたアルバム「Kid A」のオープニングを飾るのは、デジタル加工されたトム・ヨークの声がグリッチノイズのように響く、「Everything in its Right Place」。それまで先鋭的なオルタナティヴ・ロックを作り続けてきた彼らのイメージをブチ壊すような、エレクトロニック・ミュージック。この時期トム・ヨークは、エイフェックス・ツインやオウテカのようなテクノを集中的に聴いていた。ストレスで心身ともに疲れ切っていた彼には、人間の声が介在しない無機質な電子音に、むしろ感情移入していたのだという。


 そしてこのナンバーは、映画『ザ・クリエイター/創造者』(23)で象徴的に使われている。時は、AIと人間が存亡をかけた戦いを繰り広げている2075年。AIを生み出した創造者(ニルマータ)の情報を得て、元特殊部隊のジョシュア(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は米軍の暗殺ミッションに同行する。そこで彼は、幼い少女の姿をしたAIのアルフィー(マデリン・ユナ・ヴォイルズ)と出会う──。そして潜伏先のニューアジアに向かう場面で流れるのが、「Everything in its Right Place」なのだ。トム・ヨークと同じように、ジョシュアも人間ならざるものにシンパシーを感じるようになることを、この曲は示唆しているのかもしれない。



『ザ・クリエイター/創造者』© 2023 20th Century Studios


 『2001年宇宙の旅』(68)のHAL 9000や、『ターミネーター』(84)のスカイネットのように、AIは人類に反旗を翻す存在であり、人類のテクノロジーに対する盲信に警鐘を鳴らす象徴として描かれてきた。トム・クルーズがとにかく体を張ることでお馴染みの人気シリーズ最新作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(23)でも、立ちはだかる敵は”エンティティ”と呼ばれるAIだった。


 その一方で、『her/世界でひとつの彼女』(13)や『エクス・マキナ』(14)など、近年では人間に寄り添う存在として描かれる作品も作られている。監督を務めたギャレス・エドワーズもまた、悪役ばかり割り振られてきたAIに、新しい光を当てたいと考えていた。


 「僕の好きな映画では、悪役が一番面白いキャラクターなんだ。『タクシードライバー』(76)でも『ゴッドファーザー』(72)でも『レザボア・ドッグス』(92)でも、何でもいい。悪役の視点から経験すると、彼らを好きになるんだ。それから僕が好きなのは、彼らの視点で味方するようになって、ちょっと引き裂かれるような気持ちになるときなんだよ」(*1)


 ギャレス・エドワーズが語るところの“引き裂かれるような気持ち”、つまり人類とAIとの間で引き裂かれる葛藤こそが、『ザ・クリエイター/創造者』をエモーショナルなSF映画たらしめている。





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