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『ひなぎく』破壊と創造のマリオネット

©:State Cinematography Fund

『ひなぎく』破壊と創造のマリオネット

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オーディエンスの映画



 「私の映画を前にして観客が自由を感じていることに気づいたとき、私は熱狂する」(ヴェラ・ヒティロヴァー)*2


 大学で建築と哲学を学び、チェコ・ヌーヴェルバーグ唯一の女性の映画監督になったヴェラ・ヒティロヴァーは、どこからどう見てもフェミニストの映画を撮っていたが、生涯に渡ってフェミニストを名乗ることはなかった。またミロス・フォアマンやアイヴァン・パッサーのように外国に亡命することもなく、活動禁止処分を経てもチェコスロバキアに留まり映画を撮り続けることを選択した。


 『ひなぎく』の持つ感情は90年代の日本よりも現在の方がより卑近に、より切迫した形で伝わるはずだ。本作はパフォーマンス・アートの映画であり、オーディエンスが参加することで初めて完成する映画でもある。そもそも人形は私たちが命を吹き込んであげるものだ。二人のマリエのバラバラに切り刻まれた身体をつなぎ合わせるのは、私たちオーディエンスなのだ。実際ヴェラ・ヒティロヴァー自身の言葉よりも、この作品を永遠のバイブルとする様々なジャンルのアーティストやオーディエンスの解釈の方が、圧倒的な豊かさに富んでいる。そしてそれこそがヴェラ・ヒティロヴァーの望んでいた形なのだろう。


 彼女たちを利用しようとする年配男性たちを嘲笑い、次々とバイバイしていくマリオネットたち。世界最悪のマリオネットとして巨大なシャンデリアにブランコのように乗って遊ぶマリエたちのバカ騒ぎは、どこからどう見ても最高にパンクだ。マリオネットは汽車に乗る。たとえ元の形に戻らなくても、汽車に乗った彼女たちのスピリットは、この映画をこよなく愛する私たちオーディエンスが永遠に引き継いでいく!



*1 Liberation [Les petites pétroleuses de Prague]

*2 Cahiers du cinéma, 198



文:宮代大嗣(maplecat-eve)

映画批評。「レオス・カラックス 映画を彷徨うひと」、ユリイカ「ウェス・アンダーソン特集」、リアルサウンド、装苑、otocoto、松本俊夫特集パンフレット等に論評を寄稿。



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作品情報を見る



『ひなぎく』

監督:ヴェラ・ヒティロヴァー

シアター・イメージフォーラムにて

2023年10月14日(土)~終了日未定 レイトショー 連日21:00

大阪の扇町キネマにて

10月18日(水)、22(日)、24(火)と、11/3(金祝)~9(木)連日13:25

富山のほとり座でも上映予定


配給:チェスキー・ケー

公式サイト:https://hinagiku2014.jimdofree.com

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