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『悪魔のシスター』観客をピーピングトムへと引き摺り込む、とびっきりの悪夢

©1973 American International Pictures, Inc.

『悪魔のシスター』観客をピーピングトムへと引き摺り込む、とびっきりの悪夢

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インディーズな実験精神



 そもそもブライアン・デ・パルマが『悪魔のシスター』のプロットを思いついたのは、ある結合双生児に関する記事を読んだことがきっかけだった。


「1966年にライフ誌で、マーシャとダーシャというロシア人のシャム双生児についての記事を読んだんだ。記事の最後には、ソファに座っている二人の少女の写真が載っていて、キャプションには、“二人の少女は、股関節でつながっているという事実を除けば生理的には正常だが、年をとるにつれて心理的な問題が生じてきている”と書かれていた。双子の一人は非常に不機嫌そうで不穏な表情をしていて、もう一人はとても健康的で微笑んでいるように見えた。この強烈なビジュアルイメージによって、私の頭の中ですべてのアイデアが動き出したんだ」(*2)


 ダニエル役のマーゴット・キダーとグレース役のジェニファー・ソルトは、実生活ではルームメイト同士。そしてジェニファー・ソルトとデ・パルマは、サラ・ローレンス大学からの知り合いだった。ジェニファー・ソルトへのインタビューによれば、デ・パルマは二人と一緒に暮らしていたこともあったという。


「彼(デ・パルマ)は私にとって本当の兄のようだったし、マーゴットとのロマンスも始まったこともあって、かなり長い間一緒に住んでいました。彼はスティーヴン・スピルバーグ、マーティン・スコセッシ、ハーヴェイ・カイテルとも友達で、一緒に海に入ったり、ビーチで過ごしたり、私が作る食事を一緒に食べたりしたんです」(*3)



『悪魔のシスター』©1973 American International Pictures, Inc.


 いやもう、出てくる名前がハリウッド・レジェンドばっか!マーゴット・キダーとジェニファー・ソルトの2人が『悪魔のシスター』の主要キャラクターにキャスティングされたのは、そんな関係性によるところが大きかったのだろう。クリスマス・パーティの席で2人がプレゼントの箱を開けると、この映画の脚本が入っていたというデ・パルマからのサプライズも、映画仲間としての絆を感じさせるエピソードだ(ちなみにグレースの母親役は、ジェニファー・ソルトの実母メアリー・ダヴェンポート。リアル母娘がスクリーンでも母娘を演じている)。


 仲間に囲まれて制作した『悪魔のシスター』は、結果的にブライアン・デ・パルマのストレートな嗜好、インディーズな実験精神が爆発している。前述のヒッチコック・オマージュに加えて、デ・パルマの代名詞ともいえるスプリット・スクリーン、『ローズマリーの赤ちゃん』(68)に影響を受けたというおどろおどろしい悪夢シーン(本作は35mmフィルムで撮影されたが、夢のシークエンスは粒子の荒い16mmフィルムで撮影されている)、そして奇妙な後味を残すラストシーンの切れ味。


 隅から隅までヒッチコック愛に溢れた本作は、デ・パルマなるものが横溢した作品でもあるのだ。




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