30年後の再会
スポーツ局SNYの番組では、ジーナ・デイヴィスやロリ・ペティら出演者たちが、製作から30年後の2022年に集まって、かつての想い出を語り合っている。
ジーナは「それまで野球をした経験がなかったので、ゼロの状態で取り組むことになった」と製作当初のことをふり返る。一方、彼女の妹役、キットを演じたペディは「もともとスポーツが好きで、昔、野球チームの中でただひとりの女の子だったこともある」と語る。
この映画ではふたりの姉妹の葛藤も中心的なテーマになっている。ジーナが演じる姉は美しく、優秀で、すでに結婚もしている。一方、妹の方は姉の影に隠れた存在で、劣等感を抱えながら生きている。冒頭、スカウトマンが目にとめていたのも姉の方で、妹は二番手の選手である。そんなふたりの関係がやがて変化していくあたりにもドラマ的なスリルがあるが、これに関してペティは「ジーナは背も高くて美しいから、姉の設定に重なり、ダメな妹役にすぐに入り込めた」と語っている。
その後この映画は、アメリカの野球やソフトボールで活躍する女子選手などにも大きな影響を与えている。ニューヨーク・ヤンキーズのマイナーリーグで初めて女性監督として契約をかわしたレイチェル・バルコベックと、ソフトボールの名選手で今はスポーツキャスターとなったジェシカ・メンドーサは、この映画に勇気づけられスポーツの世界をめざした、とその影響力の大きさをSNYの番組内で語っている。
『プリティ・リーグ』(c)Photofest / Getty Images
また、この映画でトム・ハンクス扮する監督が女子選手をどなりつけながら言う「野球に涙なんかない(There’s no crying in baseball)」は忘れがたい名セリフと考えられていて、2005年版のアメリカ映画協会(AFI)が選んだ映画史上の100の名セリフの54位に入っている。
ペニー・マーシャル監督は「この映画は友情の物語でもあるのよ」と語っているが、30年後のSNYの番組でズームを通じて集まった俳優たちは、とても和気あいあいと当時を振り返っている。マドンナとの共演に関しても、「彼女はすごくフレンドリーでチームの良きメンバーになってくれた」と振り返っていた。また、かつて女子の野球チームで活躍していた実在の選手たちも映画製作に助力し、かつての選手経験が映画作りに生かされたようだ。
その後の出演者たちの反応を見ていると、映画全体を包み込む温かい空気は監督や出演者たちのチームワークの良さから生まれていたことが分かる。
軽い気持ちで楽しめるエンタテインメントだが、それでいて、アメリカの意外な野球史が伝わり、女性に人生の選択肢が多くなかった時代に、野球によって新世界に踏み出した女性たちの誇りや活躍も伝わる。アメリカのライブラリー・オブ・コングレスは、この映画を「文化的、歴史的、芸術的にも保存に値する」という理由で、ナショナル・フィルム・レジストリ―に2012年に登録している。