1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ソイレント・グリーン
  4. 『ソイレント・グリーン』アンモラルで風変わりなディストピアSF ※注!ネタバレ含みます
『ソイレント・グリーン』アンモラルで風変わりなディストピアSF ※注!ネタバレ含みます

©︎2024 WBEI

『ソイレント・グリーン』アンモラルで風変わりなディストピアSF ※注!ネタバレ含みます

PAGES


モラルの失墜



 『ソイレント・グリーン』の原作は、ハリー・ハリソンが1966年に発表したSF小説「人間がいっぱい」。およそ6年にわたって彼は公害や人口問題についてリサーチを行い、30年後にどんな未来が待ち受けているのかを予測。考えられる限り最も最悪なシナリオを元に、ディストピアSFを書き上げた。チャールトン・ヘストンとプロデューサーが小説を読んで気に入り、映画化が決まったのである。だが、原作に大きな改変が施されたため、原作者と製作会社のMGMの間には大きな隔たりが生じてしまった。ハリー・ハリソンはその怒りを隠さない。


 「ハリウッドはいつものやり方で、原作者をぞんざいに扱った。映画化権を買ったのがMGMであることを隠すためにダミー会社が設立され、著者が脚本をコントロールできないように契約書が作成されたんだ」(*2)


 だがその一方で、完成した映画には一定の評価も与えている。


 「この映画に半分は満足している。小説のメッセージは届いていると思う。メジャーなスタジオが製作したメジャーな映画を見るのは、エキサイティングな経験だった」(*3)


 最大の改変ポイントは、合成食品の正体が人間だったことだろう。ラストでソーンが叫ぶ「Soylent Green is People!」(ソイレント・グリーンは人肉だ!)は、アメリカン・フィルム・インスティチュート(AFI)が選んだ「アメリカ映画の名セリフベスト100」にもランクインされているほどに、インパクトが高い。特権階級のアパートには“家具”と呼ばれる美しい女性が常駐しているという設定も、映画のオリジナルだ。



『ソイレント・グリーン 《デジタル・リマスター版》』©︎2024 WBEI


 そこから浮かび上がってくるのは、モラルの失墜。それは主人公のソーンも例外ではない。捜査と称して、“家具”のシャール(リー・テイラー=ヤング)とベッドインしてしまうのは、彼女をひとりの人間として見ていないことを指し示している。溢れかえる群衆のなか、暗殺者の誤射によって罪のない人々が次々と撃たれていくとき、誰ひとり被害者をケアしようとしないのも、無気力と倫理観の欠如を表したものだろう。


 表面的には、本作は謎の殺人事件を捜査するサスペンス・アクションとして構築されている。だがその皮を一枚めくると、露出されるのはアンモラルで風変わりなディストピアSFだ。職人監督リチャード・フライシャーが、過激な映像作家であることを知らしめた一作が、この『ソイレント・グリーン』なのである。


(*1)https://www.hollywoodreporter.com/feature/soylent-green-food-people-twist-planet-dark-secret-1235348174/

(*2)、(*3)https://www.tcm.com/this-month/article/406/



文:竹島ルイ

映画・音楽・TVを主戦場とする、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」(http://popmaster.jp/)主宰。






作品情報を見る



『ソイレント・グリーン 《デジタル・リマスター版》』

5月17日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー 中

提供:キングレコード 配給:コピアポア・フィルム

©︎2024 WBEI

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ソイレント・グリーン
  4. 『ソイレント・グリーン』アンモラルで風変わりなディストピアSF ※注!ネタバレ含みます