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『ミクロの決死圏』60年代『2001年宇宙の旅』以前、群を抜くクオリティの傑作SF (前編)
『ミクロの決死圏』あらすじ
脳内出血の重症を負った科学者の命を救うため、想像もつかない治療法が試みられる。外科手術不可能と診断されたその患部に、手術担当員を細菌大に縮小して送りこみ、体の内側から手術しようというのだ。制限時間は1時間、果たして作戦は成功するのか?
『2001年宇宙の旅』(68)が登場するより前、SF映画と言えばB級の代名詞のような存在だった。しかし数少ない例外として、MGMの『禁断の惑星』(56)と、20世紀フォックスの『ミクロの決死圏』(66)がある。この2作は、予算、シナリオ、デザイン、特撮などの点で群を抜くSFの傑作として、映画史にその名前を留めている。今回は『ミクロの決死圏』を、2回に分けて徹底的に深く掘り下げてみる。
Index
- ストーリー
- 『ミクロの決死圏』の企画スタート
- CMDF本部の描写
- 体内のプロダクションデザイン
- プロテウス号と特撮
- アート・クルックシャンクの参加
- プロテウス号の縮小と血管内部の表現
- 背景との合成
- 大渦巻きと心臓の撮影
- 肺胞・内耳・脳
ストーリー
冷戦時代。チェコのベネシュ博士(ジーン・デル・ヴァル)が米国に亡命を申請し、CIAの情報部員グラント(スティーヴン・ボイド)に守られて空港に到着する。この時代の米ソは、物体を縮小できる技術を持っていたが、縮小可能な時間はわずか60分間しかなく、それを過ぎると元の大きさに戻ってしまう問題を抱えていた。
しかし、ベネシュ博士の理論が実用化されれば時間制限がなくなり、軍隊を細菌サイズに縮小して敵基地に潜入させることが可能になる。「ベネシュ博士のアイデアが米国に盗まれるくらいなら、博士を殺してしまった方が良い」と考えた東側は、秘かにスパイを送り込んで暗殺を企てる。
『ミクロの決死圏』予告
大きな仕事を終えて休んでいたグラントは、再び呼び出される。そこは軍の秘密研究施設であるCMDF(総合ミニチュア統制軍)本部だった。カーター将軍(エドモンド・オブライエン)とリード大佐(アーサー・オコンネル)は、ベネシュ博士の脳内に縮小化した精鋭チームを送り込み、脳挫傷のレーザー治療を行う計画を立てる。
チームに選ばれたのは、脳外科医デュヴァル博士(アーサー・ケネディ)と助手のコーラ・ピーターソン(ラクエル・ウェルチ)、循環器の専門医マイケル博士(ドナルド・プレザンス)、原子力潜水艇プロテウス号の艦長オーエンス(ウィリアム・レッドフィールド)らである。しかし、軍上層部はチーム内にスパイが潜入している可能性を考え、グラントを監視役として指名した。
チーム5人を乗せたプロテウス号は縮小され、頸動脈から注射されて脳に向かう。彼らの居場所は、燃料から出る放射線を追跡することで、外部から確認することができ、無線での連絡も可能だった。順調に航行していたプロテウス号だったが、突然血流が激しくなり、動脈と静脈が癒着してできた穴に吸い込まれてしまう…。