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『ミクロの決死圏』60年代『2001年宇宙の旅』以前、群を抜くクオリティの傑作SF (前編)

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『ミクロの決死圏』60年代『2001年宇宙の旅』以前、群を抜くクオリティの傑作SF (前編)

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プロテウス号の縮小と血管内部の表現



 アボットとクルックシャンクが最初にぶち当たった問題は、プロテウス号の縮小シーンだった。ストーリーボードに描かれていたのは、真俯瞰から見たプロテウス号が、1/10に縮んでいく描写である。


 だが当時、シネマスコープ用のズームレンズは未開発であり、エレベーターのような垂直のドリーを作るにもスタジオの高さが足りない。


 そこでまず、アナモフィック・レンズを装着した4×5インチのスチルカメラを用い、プロテウス号の写真を俯瞰で撮る。これを8×10インチのカラー写真にプリントし、輪郭を切り取った。そしてコバルトブルーに塗装されたボードに貼り付け、垂直に立てる。そして水平にレールを敷き、9.8mmの超広角(球面)レンズを付けたカメラで、ドリーバックしながら再撮した。これを素材として、床の映像とブルーバック合成することで、1/10の縮小が表現された。


 血管内のセットは、柔らかな樹脂とグラスファイバーで作られた、奥行き30m、直径15mのトンネルである。見かけ上、無限大の長さがあるように内皮細胞の列が描かれていた。


 苦労が強いられたのが照明で、完全に周囲を覆っているセットには、ライトを置く場所がない。そこでラズロは、細胞間の隙間に狭い開口部をたくさん作り、全体のソフトなライティングを実現させた。さらにライトのカラーフィルター・ホイールを回転させることで、血流の雰囲気を表現している。


 一番問題となったのは、血管内を流れる赤血球の表現である。最初クルックシャンクは、ディズニーでの経験から、これをセルアニメで描くことにした。しかし、3万5,000ドルを費やして完成したそのアニメーションは、実写の背景に合成してみると、どうにも馴染まないと判断され、全て却下されてしまう。


 そこで、特殊効果スタッフのボブ・チェスラーが、ユニークな装置を数週間掛けて完成させた。彼はまず、約2.7×1.8×1.2mのガラスの水槽を作り、それを水で満たした。水槽の底には、上向きに配置された電動バルブがあり、ワセリンとオイルをブレンドして加熱した圧力容器に繋がっている。チェスラーがバルブを開くと、そこから小さな油滴が吹き出し、浮力で水面に上昇する。これを黒バックで高速度撮影し、血管内を撮ったフィルムに多重露光すると、見事に赤血球の流れが表現された。


 プロテウス号の船内から血球の流れを見るシーンでは、古いサーチライトから直径90cmの放物面鏡を取り出し、銀メッキを剥がして水槽の上部に沈めた。そして、9.8mmの超広角レンズを付けたカメラを直下に向け、油滴がそのカーブに沿ってぶつかってくるように撮影する。これにより、プロテウス号のフロントグラスに赤血球が当たって、バウンドしているような効果が表現された。ただし、この9.8mmは球面レンズであったため、合成時にオプチカル・プリンターでスクイーズ(光学圧縮)して、シネマスコープに対応させている。




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