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『トロン』史上初の本格的CG映画、誕生への長い道のり (前編)

『トロン』史上初の本格的CG映画、誕生への長い道のり (前編)


 まだコンピューターという存在が一般的でなかった1982年。ディズニーから突然、極めて斬新な映画が登場する。それは、コンピューター内のサイバー空間を舞台にしており、まだ世間にはほとんど知られていない、コンピューターグラフィックス(CG)を大規模に用いていた。しかしそこに到達するまでには、非常に長い助走期間が必要だった。


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『トロン』あらすじ



 IT企業エンコム社の元社員ケヴィン・フリン(ジェフ・ブリッジス)は、自分が作成したゲームの権利を、同僚のデリンジャー(デビッド・ワーナー)に盗まれてしまう。そのゲームは大ヒットし、彼はたちまちエンコムの社長に出世したが、フリンは追放されてしまった。


 フリンは盗作の証拠を掴むべく、エンコムにハッキングを試みる。それを嗅ぎつけたエンコムの社員アラン(ブルース・ボックスライトナー)は、恋人のローラ(シンディ・モーガン)と共にフリンを訪ねる。フリンは理由を説明し、エンコム社内から直接アクセスさせてくれと頼み込む。


 エンコムに潜入したフリンは、ローラのコンピューターからハッキングを試みるが、突然デジタイズされてサイバー空間へと取り込まれてしまう。はぐれプログラムとして捕らえられたフリンは、ゲームのプレイヤーとして訓練を受ける。そこで出会ったのはアランが作り出した警備プログラムのトロン(ブルース・ボックスライトナー)だった…。




「モスクワオリンピック」のボイコット



 新型コロナウイルスの影響で、東京オリンピックが延期となってしまったが、同様にオリンピックに関する問題が関係し、そこから『トロン』が生まれていたということは御存知だろうか。


 1978年ごろ、映画プロデューサーのドナルド・クーシュナーと、アニメーション監督のスティーブン・リズバーガーは、オリンピックとのタイアップで一儲けする算段をしていた。


 彼らはまず、米国で1980年2月に開催される「レークプラシッド冬季オリンピック」に合わせ、『Animalympics: Winter Games』という30分間のセルアニメ作品(*1)を制作した。その内容は、動物たちがオリンピック競技を行うというもので、これをアメリカ3大ネットワークの1つであるNBCから、1980年2月1日に放送して好評を得た。



 そして、当時のオリンピックは冬夏同時開催であったため、NBCとの契約は7月の「モスクワオリンピック」に合わせ、後編となる『Animalympics: Summer Games』も同時制作することになっていた。


 しかし1979年12月24日に始まった、ソ連によるアフガニスタン侵攻の影響で、米国のカーター大統領がモスクワオリンピックのボイコットを主唱。約50カ国がこれに賛同した。


 これを理由としてNBCは、リスバーガー・スタジオとの放送契約を一方的に破棄してしまう。それでもリスバーガー・スタジオは諦めず、冬編・夏編を合わせて再編集を行い、さらにシーンを追加して、全1時間18分となる劇場版『アニマリンピックス』(80, 日本劇場未公開)を海外向けに作った。だが結局、劇場公開は実現せず、ワーナー・ブラザースがVHSとCATVの配給権を獲得するに留まった。


*1 この作品は透過光をかなり多用しており、たしかに『トロン』の監督の作品だと理解できる。ちなみにアニメーターには、後に『アイアン・ジャイアント』(99)、『Mr.インクレディブル』(04)、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(11)などを監督する、ブラッド・バードも参加していた。



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