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『ミクロの決死圏』60年代『2001年宇宙の旅』以前、群を抜くクオリティの傑作SF (前編)

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『ミクロの決死圏』60年代『2001年宇宙の旅』以前、群を抜くクオリティの傑作SF (前編)

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背景との合成



 舷窓の描写には、いくつかリア・プロジェクションのショットがあったものの、大半がブルーバック合成で処理されている。これは本作の弱点と言える箇所で、特にプロテウス号のドーム状キャノピーは、マスクの抜けの悪さが目立っている。


 ならば全部リア・プロジェクションにしてしまえば、合成の不自然さは回避されたはずだが、そうなると背景となる映像を、俳優の撮影日までにすべて完成させておく必要があり、スケジュール的に無理である。


 この時代、大手スタジオはトラベリングマット技術の開発にしのぎを削っていた。前述のようにディズニーはナトリウム・プロセスを用いていたし、MGMはその開発に協力したMPRC(映画研究評議会)のペトロ・ブラホスに依頼して、三色分解ブルーバック合成を実現させている。また、ワーナー・ブラザースは紫外線プロセスに取り組み、ソ連ではモスフィルムが、米国では成功しなかった赤外線プロセスを実用化させている。さらに英国ではランク・フィルム・ラボが、ディズニーより先にナトリウム・プロセスを実用化させていた。日本もけっして遅れておらず、東宝が三色分解ブルーバック合成に取り組み、大映は透過式ブルースクリーンを導入した。


 こういった潮流に、インカメラ・エフェクト中心だった20世紀フォックスの特殊効果部は、完全に出遅れたのである。せっかくクルックシャンクを招いたものの、特殊カメラを必要とする方法は時間的に無理だった。




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