2018.07.25
ギリギリまでこだわり抜いた、名シーン誕生の裏側
すべてはブラキオサウルスとともに始まり、ブラキオサウルスとともに終わる。この場面で俳優たちの目前に張り出されたのは、CG処理のためのグリーン・スクリーン。そこにうまく岸壁のブラキオサウルスへと目線を合わせるための「一点」が定められ、クリス・プラットもブライス・ダラス・ハワードもここへ向けて深い哀切の感情を注ぎながら彼らなりの「別れ」を表現してみせた。
もちろんこれだけではない。何か俳優たちが少しでも演じやすくなるように活用できるものはないだろうか。そう考えたバヨナ監督が取り出したのは音楽だったという。ジョン・ウィリアムズによるおなじみのシンフォニー。それも少し甘く、物哀しいバージョンのものをスタジオ内に響かせ、実際にはその場にいないブラキオサウルスを俳優らの胸の内に浮かび上がらせようとしたのである。それがいかに効果的な演出だったかは本編の仕上がりを見れば明らかだ。
いずれにしても『ジュラシック』シリーズは、もはや人間が逃げ惑うだけのパニック映画ではない。一作一作において積み重ねられてきた感情表現はこの長い年月の中で比べものにならないくらい進化を遂げた。当然ながら最新作に課せられたハードルも相当なまでに高かったはずだが、バヨナ監督はアニマトロニクスやCG、あるいはその双方を巧みに掛け合わせながら、その務めを見事に全うしてみせたのだ。
参考:
https://www.slashfilm.com/colin-trevorrow-jurassic-world-fallen-kingdom-interview/
1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンⅡ』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』
配給:東宝東和
© Universal Pictures © Giles Keyte