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『ジュラシック・パーク』優れた映像言語を持つスピルバーグの「恐怖演出」ショーケース

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『ジュラシック・パーク』優れた映像言語を持つスピルバーグの「恐怖演出」ショーケース


『ジョーズ』がうながした恐怖演出の完成



 本作の製作時、スピルバーグは「これは恐ろしいモンスター映画ではなく、野生動物映画だ」と語っていたが、後年『ジュラシック・パーク』の位置付けを2007年製作のTVドキュメンタリー『映像の魔術師 スピルバーグ自作を語る』の中で、


「この作品は『激突!』と『ジョーズ』とを掛け合わせたような映画になる。つまり私の得意分野だということだ」と、自身の恐怖演出作品の系譜にあることを確信的に認めている。


 得体の知れない大型トレーラーと平凡なマイカー通勤者との息詰まる死闘を描いた『激突!』は、SF作家リチャード・マシスンの原作をTVムービー化したものだ。新進気鋭の若手だったスピルバーグは、大胆にも本作の脚本からセリフの50%を削除し、5台のカメラを駆使して頭の中で構図やショット割りを考えながら撮影を敢行。TVの枠を超えた壮絶なアクションに加え、追われる者の心理にひたすら迫るプリミティブなサスペンスに仕立て上げたのだ。この時点でフレーム構図、目線の誘導、ショットからショットへと移行するテンポに優れた、非凡な恐怖演出のベースを存分にうかがわせている。


 そんな『激突!』をプロトタイプに、よりテクニックを磨き上げたのが『ジョーズ』だ。同作では人食いザメの脅威を余すところなく描こうとしたスピルバーグだが、撮影現場ではアニマトロニクスのサメがおもうように動かず、苦汁を舐めている。



 そのため、サメを見せずに恐ろしさを創出する方向へと舵をとり、水面に浮かぶ背びれや撃ち込まれたタル、食いつき引きずられる人間などを用いてサメを暗示的に描くことで、スピルバーグ流・恐怖演出の確立をうながしたのである。そして、このとき編集のヴァーナ・フィールズと肩を並べて同作業をおこなったことから、彼女が持つ独自の緊張感を刻むリズム(緊張場面前後のふたコマを抜く等)を会得し、それをさらにアップデートさせていったのだ。


 こうしたスタイルの研鑽こそが、今回の『ジュラシック・パーク』、ひいては後の『宇宙戦争』(05)へとエッジの立った応用を利かせていく。スピルバーグは同作で、自らのスリラー演出をテロリズムのアレゴリー(比喩)として本編に適合させ「ある日突然アメリカ本土を襲う、不条理な暴力への恐れ」といった事象を可視化へと導いている。この国家変容や崩壊の図式はまさしくポスト9/11といえるもので、スピルバーグの「見せないことで恐怖を与える」方法論は、ひとつの大きな成果を果たしたといえよう。



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