『ストリート・オブ・ファイヤー デジタル・リマスター版』「ロックン・ロールの寓話」が生み出した、時を超えて輝き続ける音楽

ディスコ・ミュージックの旗手でもあったダン・ハートマンとは？

　ジム・スタインマンの2曲の他にもサウンドトラックには注目曲が並ぶ。とくに忘れがたいのが、劇中でソレルズが歌う楽曲だ。エレンを救出した一行が、追っ手から逃げるためバスをジャックする。そのバスには黒人ヴォーカルグループ「ソレルズ」が乗っていた。彼らがエレンの心を癒すように、アカペラのコーラスで歌う「カウントダウン・トゥ・ラヴ」は、この映画における一服の清涼剤のごとき名シーンなのだが、その後ステージで披露する「I Can Dream about You（あなたを夢みて）」も、スタインマンの2曲と並んで今作で有名になった曲だ。

「I Can Dream about You）」MV

　これらソレルズの曲も、演じた俳優の歌声ではなくウィンストン・フォードというシンガーによるもの。エンドクレジットではフォードの名が出るのだが、サウンドトラック・アルバムでは別のアーティストの歌声で収録され……と、ややこしい事態になっている。サントラで「カウントダウン・トゥ・ラヴ」を歌うのは、グレッグ・フィリンゲインズ。キーボード奏者として有名な彼は、スティーヴィー・ワンダー、マイケル・ジャクソンら錚々たる才能と仕事をしてきた。

　そして「あなたを夢みて」は、作曲を手がけたダン・ハートマンがサントラで歌っている。このダン・ハートマン、日本ではその名があまり知られていないが、1970年代後半、ディスコ・ミュージック界に旋風を巻き起こしたシンガー・ソングライターで、「リライト・マイ・ファイヤー」や「インスタント・リプレイ」などヒット曲を送り出した。後者は当時、日本で少年隊がカバーしてステージやTVで歌い、踊っていた（ちなみに少年隊は「ノーホエア・ファスト」もカバーしている）。

『ストリート・オブ・ファイヤー デジタル・リマスター版』©1984 Universal Studios. All Rights Reserved.

　「あなたを夢みて」はハートマンにとっても最大のヒット曲であり、『ストリート・オブ・ファイヤー』のサントラを聴いて、彼を黒人だと思い込んでいた人も多かった。「ブルー・アイド・ソウル（＝もともと黒人のものであったR&Bやソウルを白人が取り入れた音楽のジャンル）」の旗手だったハートマン。44歳で早すぎる死を迎えたのが惜しまれるが、ロックン・ロールの寓話である、この『ストリート・オブ・ファイヤー』によって、ダン・ハートマンの曲も、ジム・スタインマンの曲も、作り話の伝説＝FABLEを超えて、永遠に受け継がれる真実としての伝説＝LEGENDになったと信じている。

文：斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。スターチャンネルの番組「GO！シアター」では最新公開作品を紹介。

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ストリート・オブ・ファイヤー デジタル・リマスター版

7月21（土）シネマート新宿ほかダイナマイトロードショー！以降全国順次公開

©1984 Universal Studios. All Rights Reserved.

※2018年7月記事掲載時の情報です。