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『エイリアン:ロムルス』ザ・ガール・ロスト・イン・スペース

(c)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『エイリアン:ロムルス』ザ・ガール・ロスト・イン・スペース

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リプリーとレイン



 蜘蛛のように動き、人間の顔に張り付き寄生するフェイスハガーは『エイリアン:ロムルス』にも登場する。アトラクションのようなアクションが展開される本作において、フェイスハガーの軍団に追いかけられ、廊下を駆け抜けるシーンは出色の出来だ。寄生されることへの恐怖や出産への恐怖は『エイリアン』シリーズを貫くテーマでもある。原案者のダン・オバノンは、エイリアンによる寄生が女性の観客よりも、むしろ男性の観客を恐怖に陥れることをイメージしていたという。レイプされた男性による妊娠と出産、そして死である。


 エイリアンは致命傷を負わせないように宿主(ホスト)に寄生する。エイリアンはギリギリのところで宿主を生かしながら、最終的に腹を突き破る。男性なるものへの警鐘。シリーズ第一作の『エイリアン』において、物語の主導権が男性の登場人物たちから徐々にリプリーの方にシフトしていった理由のようなものがここにはある。最後に生き残るのはリプリーだ。『エイリアン4』(97)に出演したウィノナ・ライダーは、リプリーのことを「私たちの誰にとっても初めての女性アクションヒーローだった」と語っている。



『エイリアン:ロムルス』(c)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.


 『エイリアン:ロムルス』のレインが銃を構える姿、特にその重心を落とした歩き方はリプリーのイメージを想起させる。しかしレインはリプリーのコピーではない。ケイリー・スピーニーはソフィア・コッポラ監督の『プリシラ』(23)やアレックス・ガーランド監督の『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(24)にしても、まだティーンのように見えるところが作品に大きな広がりをもたらしている。少女のように見える大胆で勇敢なヒロイン。相棒のアンドロイドであるアンディを演じたデヴィッド・ジョンソンによるニュアンス豊かな演技と、自分のやるべきことをただこなしていくレイン=ケイリー・スピーニーの的確な演技の呼吸が素晴らしい。レインとアンディーは補完関係にある。絶体絶命のピンチを迎える度に、アンディの言葉や行動をどこまで信じられるかという判断と疑念が、物語の分岐点になっていく。そしてアンディへの信頼と疑いは、どこからどこまでが人間なのか?という問いを常に投げかけている。


 孤児であるレインと世話係のアンドロイド。二人は姉と弟の関係であり、それぞれの保護者のようであり、対等の立場であり、お互いの人生の導き手のようでもある。その関係性は常に流動的に補完し合っている。アイコンタクトで理解し合える二人。レインの目元のアップと離れたところにいるアンディの目元のアップが編集でつながれる。二人は離れたところにいてもテレパシーのようなものでつながっている。望むことはただ一つ。お互いにとって最善の結果を迎えることだ。





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