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「編集」という観点から見るホラー映画『ゾンビ』の驚異性

「編集」という観点から見るホラー映画『ゾンビ』の驚異性


CMディレクターとして慣らしたロメロの手腕



 この『ゾンビ』が放つ編集の特異性は、他ならぬ監督ジョージ・A・ロメロの手技によるものだ。ロメロは同作において「ムビオラ」や「ステインベック」といった、スコープで映像を再生しながら編集点をチェックし、フィルム編集をしていく専用機器を使っていない。音響ヘッド付きの6連シンクロナイザーとビュワーを用い、自ら編集作業をおこなっているのだ。前者はショットのコマ数と時間をカウントし、フィルムとシネテープとの同期を図ることができるもので、後者はフィルムの画像を映し出す小窓の表示器だ。ロメロは両方を巧みに使い、35mmのオリジナルネガからおこした16mmのデュープ(複製)プリントで仮組みをして、オリジナルネガに手を入れるのである。


 これはロメロが映像作家としての初期から手がけているやり方で、その様子は『ゾンビ』の貴重な製作現場を収めたドキュメンタリー『ドキュメント・オブ・ザ・デッド』(85)で確認ができる。この中でロメロは、リワインダー(フィルムを前後に送るハンドルつきのリール)を素早く回し、シンクロナイザーとビュワーで編集点を見つけると、一気呵成にプリントを刻み接合している。その一連の動作はアナログ編集の常識に照らし合わせても超然として淀みがなく、あたかも熟練した包丁さばきで食材を調理する、一級の料理人を思わせるのだ。 




 このように編集の手技を極め、ショットを細かく割るスタイルは、ロメロがCMディレクター出身だったことに起因する。彼は短時間にできる限りの情報を伝えるCMの特性を心得ており、そうした心得が特徴的な編集を支えているといっていい。そのうえハリウッドのメジャースタジオではなく、インディペンデント(独立系)で活動することで、自身が直接編集を手がけられる体制を維持しているのだ。通常、メジャースタジオの現場では撮影や照明、編集といった分業体制が敷かれ、監督がそれらを兼任することはない。だがロメロはこうした体制に懐疑的な姿勢を示し、自らの創意をダイレクトに反映させやすいインディーズを拠点に、自らの手で編集をおこなっているのである。



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