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「編集」という観点から見るホラー映画『ゾンビ』の驚異性

「編集」という観点から見るホラー映画『ゾンビ』の驚異性


独立系映画のあり方を示した編集のアプローチ



 とはいえインディーズに活動の軸足を置くことは、製作規模も予算も限られたものになってしまう。そのためロメロは低予算映画を円滑に展開させる手段として、編集に力点を置いているのだ。映像素材を多く撮ることで、画面が単調にならないようにしたり、また編集の材料に事欠かぬよう、機動性の高い手持ちカメラなどを用いて撮影をおこない、通常の倍はあろうかという素材を準備して編集をする。『ゾンビ』のショット数が3,000という膨大な数字になるのも、こうした措置の必然といえるのではないだろうか。『ドキュメント・オブ・ザ・デッド』の中で彼は言う、


「編集は脚本の段階で見せ場を絞っておけば簡単だし、凝った編集を嫌うものもいる。けど僕はたくさんの映像を撮る。それは映画を立体的に見せたいからだ」


 この技巧と効率を兼ねたロメロの演出・編集は、自身初の長編映画『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(68)の頃からすでに完成を見せている。食人ゾンビの嚆矢として世界に衝撃を与えた同作は、公開からわずか12年後の1980年にMoMA(ニューヨーク近代美術館)に収蔵された。すなわちアカデミズムの見地から"ゾンビ"というキャラクターの創造や、古典的ではないモダンホラーを生み出したことがアートとして了知され、また米インディ映画の文法を確立させた作品の一本として「映画遺産に相当するもの」だと価値を認められたのである。




 ホラー映画という、人間の心理をダイレクトに刺激するジャンルを技術的側面から語ると、本丸を外堀から矢や銃ではなく、ルーペとピンセットで攻めるようなもどかしさを覚えるかもしれない。しかし、見事なまでに恐ろしい映画の成立には、優れた技巧の痕跡が残されているものだ。バージョン違いなどの点で語られることの多いマスターピース『ゾンビ』だが、公開から40年を経た現在の観点から同作を観直すと、まだまだいろいろな発見を与えてくれる。時代を越境し、いつまでも驚異的な興奮をもたらすゾンビホラーなのだ。


参考文献

Paul R. Gagne “The Zombies That Ate Pittsburg: The Films of George A. Romero”Dodd, Mead & Company (1987)



文:尾崎一男(おざき・かずお)

映画評論家&ライター。主な執筆先は紙媒体に「フィギュア王」「チャンピオンRED」「映画秘宝」「熱風」、Webメディアに「映画.com」「ザ・シネマ」などがある。加えて劇場用パンフレットや映画ムック本、DVD&Blu-rayソフトのブックレットにも解説・論考を数多く寄稿。また“ドリー・尾崎”の名義でシネマ芸人ユニット[映画ガチンコ兄弟]を組み、TVやトークイベントにも出没。

Twitter: @dolly_ozaki



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