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『オール・ザット・ジャズ』死さえも祝祭に変えるショウビジネス伝説の自伝

(c)Photofest / Getty Images

『オール・ザット・ジャズ』死さえも祝祭に変えるショウビジネス伝説の自伝

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『オール・ザット・ジャズ』あらすじ

ブロードウェイのミュージカル演出家、ジョー・ギデオンは酒と女と煙草、そしてステージに明け暮れる日々を送っていた。そんなジョーのもとには、幻想として天使のような女性がたびたび現れる。彼女は死の象徴であった。ある日、ジョーは不規則な毎日がたたり倒れ、生死をさまよう。ジョーは無意識のうちに自分の人生を回顧する。


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日本の長寿CMは、この映画へのオマージュ!?



 「ピアノ売ってちょ〜だい」。そんなフレーズでおなじみのタケモトピアノのCMは、2000年から始まり、そのまま同じバージョンが2023年までTVで流されていた。途中でTVが地上デジタルとなって画角が変わっても、画面の左右を加工してそのまま流すという、異例の長寿CMとなった。財津一郎の周りで全身タイツのダンサーが踊る、このインパクトある演出は、ある映画がヒントになっているのは明らかだ。『オール・ザット・ジャズ』(79)である。


 『オール・ザット・ジャズ』のクライマックスで、主人公ジョー・ギデオン、および彼の人生への賛歌であるショーのMC役のオコナーの周りで踊るダンサーたちの衣装、動きは、まさにタケモトピアノのCMそのもの。全身白いタイツに動脈(赤)と静脈(青)のラインがほどこされ(タケモトCMはラインが一色だが、そっくりのデザイン)、中心の男性の衣装は黒というのも共通。偶然の一致とは思えない。



『オール・ザット・ジャズ』(c)Photofest / Getty Images


 こうしてタケモトCMによって今も語り継がれる『オール・ザット・ジャズ』は、1980年の第33回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール受賞。しかも黒澤明監督の『影武者』(80)と同賞を分け合っている。近年のカンヌはパルム・ドールが1作だが、この時代は2作受賞というケースがたびたびあった。『オール・ザット・ジャズ』の監督ボブ・フォッシーは、『キャバレー』(72)で1973年にアカデミー賞監督賞を受賞。しかもその同じ年に「PIPPIN」でトニー賞、「Liza with a Z」(ライザ・ミネリのTV用コンサートフィルム)でエミー賞とエンタメ界の主要賞を総ナメする快挙を成し遂げた。そのフォッシーの「自伝」ともいえる作品が『オール・ザット・ジャズ』であり、ロイ・シャイダーが演じる主人公ジョー・ギデオンはフォッシーそのものと言っていい。


 ボブ・フォッシーは、ミュージカルやダンスを革新した天才振付家で演出家。ブロードウェイで「パジャマゲーム」や「くたばれ!ヤンキース」、そして「シカゴ」など多くの名作を送り出した。独特の振付は「フォッシー・スタイル」と呼ばれ、ミュージカルやダンスの世界では今も受け継がれる。子供たちがミュージカルを学ぶ『シアター・キャンプ』(23)でも、フォッシーのテクニックを披露するキャラクターが登場したりしている。


 財津一郎もキャリアのスタートは帝劇ミュージカルの舞台であり、強引に結びつけるなら、ボブ・フォッシーの役割を日本のCMで託されたと言える。





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